『メインストリーム』はコッポラの孫娘が描く刺激度満載映画

アンドリュー・ガーフィールドは、それほど好みの俳優ではない。実力もあるし、魅力的でもあるんだけどね。今までは、線の細さや、ゴージャスな見かけをひっくり返してくれるほど、内面の豊かさを提示してくれなかった。そこが物足りなかった。『ソーシャル・ネットワーク』で共演した、ジェシー・アイゼンバーグとは違う。見かけを裏切る演技のバリエーションという意味で。

だけど、好き嫌いの枠を超えて、内面の空虚さをそのまま表現できる彼の力は、大きな個性でもあり、強味ともなるのは認めざる得ない。『メインストリーム』のアンドリュー・ガーフィールドは、まさしく光っている。

『メインストリーム』で彼が演じる”リンク”は、着ぐるみを着て、人に話しかけている正体不明の男として、ヒロインの前に現れる。ヒロインのフランキー(マヤ・ホーク)は、ロサンゼルスの場末のバーに勤めている。楽しみは動画を撮ること。着ぐるみの男の演説動画をアップロードしてみたら、人気を獲得。彼女は、彼の動画を次々と挙げていく。

「ノーワンスペシャル」と自称するリンクは、やがてSNSの寵児と昇り詰めていく。それと同時に彼の隠された面が露になってくる。

『メインストリーム』でノーワンスペシャルが突きつけてくるのは、私たちが眠れる羊だとしたら、それを起こしかねない鋭利なトゲだ。特別に見られたい。人と同じでありたい。何も考えたくない。ひと時の楽しみに心をゆだねたいという、ごく当たり前の願望に一撃を与える。

そのためには、インスタグラムの人気者の虚飾をはがし、人生を破滅させることも厭わない。一瞬でも日常を超えろ、芸術なんて食っちまえと、強く煽動してくる。

監督のジア・コッポラは、コッポラファミリーで、『ゴッドファーザー』シリーズや『地獄の黙示録』で名を知られたフランシス・フォード・コッポラ監督の孫娘。同じコッポラファミリーの、ソフィア・コッポラ、祖母のエレノア・コッポラ同様に、透明感あふれるァッショナブルな印象を映画に付け加えることができる。たとえ、『メインストリーム』のようなえげつない題材でも。さすがのコッポラファミリー。独特で稀有な才能ではないだろうか。表面がゴージャスである分、中身の空虚さを露呈するアンドリュー・ガーフィールドの個性と映画はうまい具合に調和していく。

たおやかな風情でお洒落でポップな感じに進んできた映画が、後半になって牙を剥く過程は凄まじい。ノーワンスペシャルの人気が最大限になり、あとは徐々に下降していくプロセスでもある。

特にラストのライブ映像の迫力は、今までのアンドリュー・ガーフィールドの空虚なイメージを一新させる、てんこ盛りの毒と、きらめきが怒涛のように襲ってくる。いいのだろうか、こんなにうかうか生きていて、って自分を見つめ直させられるほど、中身の詰まった男がそこにいた。

(オライカート昌子)

メインストリーム
10月8日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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2021年製作/94分/G/アメリカ
原題:Mainstream
配給:ハピネットファントム・スタジオ