『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』映画レビュー 3つの見逃せないポイント

幸せな気分に浸れる映画として、一番に思い浮かぶのは、映画『パディントン』だ。特に好みは『パディントン2』。スクリーンには、カラフルな色彩と音楽が溢れ、スクリーンから楽しさがこぼれていた。

監督のポール・キングは、『パディントン』の成功により、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の監督に起用された。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』が楽しさいっぱいの映画になるのは、期待通りだ。

魔法の力を持ったチョコレートを生み出すチョコ職人のチャーリー・ウォンカ(ティモシー・シャラメ)は、チョコレートで有名な街へやってきた。チャーリーの夢は、チョコレートの店を持つこと。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は、華やかなな映像、歌とダンスとユーモア、そしてちょっぴり皮肉と共に彼の冒険がに描かれている。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』には、見逃せないポイントがある。その一つ目は、極上美のシーン。キーワードは、キリンと風船。二つ目は、思わずにっこりしてしまう楽しいシーンで、キーワードは洗濯。

三つめは、くっきり鮮やかなキャラクターたちだ。特に三人のキャラクターが強烈。一人は、元経理士のアバカス。演じているのは、人気作『ダウントン・アビー』テレビシリーズや映画版で執事チャールズ・カーソン役を演じた、ジム・カーター。19年に、大英帝国勲章を授与されている重鎮でもある。彼のイギリス的な重みと軽妙のバランス具合は、映画の中でもダントツに楽しい

二人目は、チャーリーの母を演じる、サリー・ホーキンス。映画賞の常連としての実力だけでなく、愛らしさや華やかさもあり、彼女の登場で、映画の格がぐっと持ち上げられる魅力がある。

三人目は、元イギリスを代表するイケメン俳優で、今は脇役、悪役、なんでもござれのヒュー・グラント。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』の中で最も楽しめる驚きのキャスティングは、彼のウンパルンパだ。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はクラシックなミュージカル仕立ての面を持ち、息をつく間もない展開の素早さと生きの良いテンポが見る側の気分を高揚させてくれる。原作者ロアルド・ダールが持つ、ちょっとした毒もスパイスだ。

主演のチャーリー演じるティモシー・シャラメは、歌もダンスも演技も無難としか言いようがなく、彼の持ち味だった、ちょっと斜に構えたところや、世間から一歩はみ出した超然とした魅力を封印している。

このような明るい映画の主演は初だったこともあり、今回はアンサンブルキャスト映画での周囲を引き立てる役柄だ。むしろ、主演級の目立つ大活躍は、おかしさで観客を浮揚させる力が抜群の、ウンパルンパのものだったという結論になりそう。

(オライカート昌子)

ウォンカとチョコレート工場のはじまり
12月8日(金)全国公開
配給:ワーナー・ブラザース映画
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