『ポゼッサー』解説・あらすじ 映画レビュー

『ポゼッサー』解説・あらすじ

ポゼッサーとは

『ヴィデオドローム』、『ザ・フライ』、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』、『イースタン・プロミス』などの話題作を世に送り出したデヴィッド・クローネンバーグ監督。その息子のブランドン・クローネンバーグ監督の『アンチヴァイラル』以来8年ぶりの長編映画が『ポゼッサー』。

暗殺者が拉致した人間の脳と接続し、遠隔殺人を行うという刺激満載の作品。バイオレンスも印象的だが、特異な世界観に引きずり込まれる。主演は『マンディ 地獄のロードウォリアー』『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』のアンドレア・ライズボロー。他にクリストファー・アボット

『初体験/リッジモント・ハイ』、『バックドラフト』、『ルームメイト』、『ヘイトフル・エイト』のジェニファー・ジェイソン・リー、『007 ゴールデンアイ』、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのショーン・ビーンなど、大物が出演しているのも見逃せない。

ポゼッサー あらすじ

ごく平凡な主婦にも見えるタシャだが、実は殺人請負会社の暗殺者という顔を持っていた。暗殺の方法は、特殊なデバイスを使ってターゲットに近しい人間の意識に入り込む。人格を乗っ取り、自分の思いのままに動かし、実行後”離脱”する。

ある新たなミッションに挑んだ彼女だったが、それは彼女の人生を揺るがしていく。

ポゼッサー 映画レビュー

体操着姿の美しい女性が、パーティ会場へつかつかと進み入り、突然、一人の男ののど元にナイフを突き刺す。「脱出!」と言いながら、銃を自分の口に入れる。引き金を引こうとするが指は動かない。動かそうとしても動かない。だから、次に自分にナイフを刺す。『ポゼッサー』の冒頭シーンだ。最初からバイオレンス度はMAXだ。強烈にシーンが目を刺激する。

人の脳をつなぐ技術で、当人に成りすまし、暗殺を行う会社の暗殺者タシャが主人公。彼女は中年近い女性で、一見無害な主婦に見える。だが、会社にとっては、伝説的な存在でもある。人の脳と自分の脳をつなぐことを長年続けてきたおかげで、精神的に多少の歪みが発生してきているようだけれど、彼女は仕事を辞める決断はしない。

ついに家族とも別れて暮らすことになる。ずっと会社の出張という名目で仕事をしてきて夫も子供も本当の仕事を明かしていないのだけれど。なぜ、そこまでして過酷で残忍な仕事を続けるのか。ずっと続けてきたことから抜け出すには相当なエネルギーがいるからだろうか。精神にきたしている歪みに気づかないふりをし、次の大きな仕事に足を踏み入れる。

次の大きな仕事とは、世界的IT企業の代表者の娘婿の脳を乗っ取ること。ターゲットは代表者とその娘。このあたりから映画は、大きな川に流れ込んだようにゆったりとした描写になる、エロティックとバイオレンスもたっぷりなのだが、それ以上に余裕と高級感すら漂うのが不思議だ、そしてそれは、タシャの壊れ具合とも比例している。

ターゲットの社長を演じているのは、ショーン・ビーン。豪華な曲者俳優というべき彼を起用したことで、映画自体の質が変化していくところも見どころだ。

ポゼッサー
(C)2019,RHOMBUS POSSESSOR INC,/ROOK FILMS POSSESSOR LTD. All Rights Reserved.
2020年製作/103分/R18+/カナダ・イギリス合作
原題:Possessor
配給:コピアポア・フィルム