『罪人たち』映画レビュー 気高さと泥臭さをあわせ持つオールジャンル映画は次元を超えて飛ぶ

気持ちを高揚させる映画。最初から最後まで一瞬残らず目を釘付けにする映画。『罪人たち』はそんな映画だ。主演は双子の二役を演じるマイケル・B・ジョーダン。監督はライアン・クーグラー。マイケル・B・ジョーダンとは『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』以外の映画監督作品すべて(4作品)で組んでいる。数々の賞を受賞した『フルートベール駅で(2013)』は、初主演・初監督だった。『罪人たち』にはお互いの信頼性と絆がベースとしてあるのが見て取れる。

『罪人たち』は、サバイバルスリラーと銘打たれているけれど、オールジャンルミックス映画のエッセンスがエネルギッシュにほとばしっている。ホラー/スリラー、アクション、アフリカ系アメリカ人映画(黒人映画)、家族・兄弟、音楽映画、ダンス映画、恋愛。それぞれの要素がしっかり結びつき、隙のない充実さで分厚い物語を紡いでいく。当時のブラック・アフリカン世界の気高さが漂っている。土着的なローカル気配は、ブラックアフリカンだけでなく、アイルランドや中国の文化も感じさせるのもポイントだ。

若きサミー(マイルズ・ケイトン)は血まみれでオンボロの車から降りてくる。壊れたギターのヘッドを持っている。綿畑が延々と続く1930年代の南部の片田舎の朝の光景が眩しい。彼はぽつんと立つ小さな教会へ入っていく。彼に何があったのか。これからどうするのか。

前の日にサミーが出会ったのは、いとこの双子のスモークとスタック(マイケル・B・ジョーダン)。彼らが一旗上げようとシカゴへ行ったのは以前のこと。その日彼らは故郷の町へ戻ってきた。サミーとはいとこ同士。彼らには夢があった。黒人専用のダンスホールを開く。それは今夜だ。看板、酒、音楽、料理。すべての準備が整い、にぎやかに宴が始まったとき、何者かが忍び寄り危険な香りが漂い始める。

ホールが開店するまでは、『それでも夜が明ける』を思わせる上品質の映画にしか見えない。ホールが開店し、音楽とダンスがスタートすると不思議な空気が混じり始め、えっ? と目を凝らす。この映画はただものではない。次元や時間を飛び越える自在性に驚かされた。映画『罪びとたち』の分厚さ緻密さ立体感は、高くそびえ立ちながら観客を挑発する。

(オライカート昌子)

罪人たち
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6月20日(金)初夏IMAX®及び2D字幕、Dolby Cinema®で劇場公開
配給:ワーナー・ブラザース映画