『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』映画レビュー 唯一無二の世界に迫る

映画好きなら、見逃せない映画監督の一人が、クエンティン・タランティーノ。ドキュメンタリー映画『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』は、もっと映画が好きになり、映画の世界がわかる喜びを与えてくれる。胸熱ポイントがたっぷりだ。

クエンティン・タランティーノについて、そして彼の映画について、愛情をこめて語るのは、彼を大好きな業界の人々、彼の監督作にもっと出たくてたまらない俳優たち。

映画は三章構成。最初の章は、”革命”。『レザボア・ドッグス』、『パルプフィクション』の制作秘話だ。クエンティン・タランティーノに出会った興奮がスクリーンから飛び出してくる。

ビデオショップで働きながら、映画三昧だった彼は、脚本を書くことを勧められ『ナチュラル・ボーン・キラーズ 』や『トゥルー・ロマンス 』の脚本を仕上げる。

『トゥルー・ロマンス 』を見た製作者のローレンス・ベンダーは、「ハリウッドに何が起きているんだ? みんなどこへ消えてしまったんだ」と語る。今までのハリウッドのすべてがかすんでしまうほど、彼の出現の衝撃は大きかった。普通は、脚本が送られてきても、2ページも読めば、投げ出したくなる。ところが彼の脚本は、すぐに読み終わり、さらに何度も読み返したくなる。

『レザボア・ドッグス』で監督デビュー。批評家たちの高評価は、カンヌ国際映画祭の公式上映作品としての選出につながり、上映の翌日には、ある船に呼ばれた。そこにいたのは、レニー・ハーリン、オリヴァー・ストーン、ジェームズ・キャメロン、ポール・ヴァーホーヴェンたち。みんながタランティーノに会いたくて待っていたのだ。

第二章はジャンル映画&強い女性。『ジャッキー・ブラウン』、『キル・ビル』、『デス・プルーフ in グラインドハウス』。第三章は、正義と題し、『イングロリアス・バスターズ』、『ジャンゴ 繋がれざる者』、『ヘイトフル・エイト』の三本。

知らなかった秘話、エピソードが満載に語られる。バックステージものの面白さも際立っている。そして、映画界の変化もバックミュージックのように流れている。

『キル・ビル』のころ、香港映画の面白さは、映画好きな人々の心をとらえていた。日本映画のこだわりテイストも今とは違っていた。タランティーノの作品は、その時代ごとの熱さを伝えている。

70mmで映画を撮ること。できるだけCGを使わないこと。彼は時代に抗いながら、自分が見て育ってきた大切な映画の世界を守ろうとしている。その姿勢は、大好きなものに対する誠実さ。タイトルは、『クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男』。だが、彼の映画に対する愛情は、もっと大きい。

(オライカート昌子)

クエンティン・タランティーノ 映画に愛された男
 © 2019 Wood Entertainment
8月11日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ渋谷、新宿シネマカリテほか全国公開
配給: ショウゲート 
監督・脚本:タラ・ウッド(『21 Years: Richard Linklater』)
出演:ゾーイ・ベル/ブルース・ダーン/ロバート・フォスター/ジェイミー・フォックス/サミュエル・L・ジャクソン/ジェニファー・ジェイソン・リー/ダイアン・クルーガー/ルーシー・リュー/マイケル・マドセン/イーライ・ロス/ティム・ロス/カート・ラッセル/クリストフ・ヴァルツ
2019年/アメリカ/英語/101分/カラー/ビスタ/5.1ch/原題: QT8: THE FIRST EIGHT/R15+/日本語字幕: 高橋彩
配給:ショウゲート  公式HP:https://qt-movie.jp 公式SNS:@showgate_youga © 2019 Wood Entertainment