『パディントン 消えた黄金郷の秘密』

白状すると『パディントン 消えた黄金郷の秘密』を観る前には不安があった。理由は、前作の『パディントン2』がオールタイムベスト級の幸せ映画だったこと。次に、一作目二作目でブラウン夫人を演じていたサリー・ホーキンスが降板したこと。監督が変わったこと。ロンドンからペルーへ舞台が変わったこと。

わたしはサリー・ホーキンスが大好きで、パディントン映画が好きなのもその理由が大きかった。ぴか一の演技力と華やかさ。調べてみると自ら役を降りたらしい。「パディントン映画は大好きだけど」と言って。前作が公開された2017年にサリー・ホーキンスは、『シェイプ・オブ・ウォーター』 でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、主演級女優にステップアップしたのも理由だろうか。他にも健康上の理由がありそうだ。

『パディントン 消えた黄金郷の秘密』は、キャストがペルーでロケしたわけではないけれど、本場もののアマゾンジャングル冒険物語になっている。撮影も相当ハードだっただろう。見終わってみると、不安は杞憂だった。幸せ映画レベルも標準を高く上回っていた。

パディントンはどこにいてもパディントン。それが大きい。ロンドンのパディントンとペルーのパディントンに違いはなかった。パディントンには不安は無縁だし、平穏さと安定感とちょっとしたいたずら魂が映画に格別な味を与えている。

映画の面白さを飛躍させた功労者は他にもいる。新ブラウン夫人のメアリー・モーティマーをはじめ、ブラウンファミリーの好演も目立つが、ハンター役のアントニオ・バンデラスが本領を発揮し始めると映画に快いリズムが生まれ、追い風が吹き始める。

パディントンの原作が最初に出版されたのは、1958年。当時の生粋の英国紳士の姿がパディントンに受け継がれ、自律と穏やかさが映画を染めている。イギリス紳士、そしてイギリス映画恐るべし。

(オライカート昌子)

パディントン 消えた黄金郷の秘密

全国公開中
:© 2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.
配給:キノフィルムズ
監督:ドゥーガル・ウィルソン
脚本:ポール・キング(『パディントン』『パディントン2』『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』にて監督&脚本)
マーク・バートン(『マダガスカル』)、サイモン・ファーナビー(『パディントン2』)
出演:ベン・ウィショー(声の出演)、ヒュー・ボネヴィル、エミリー・モーティマー、アントニオ・バンデラス、オリヴィア・コールマン、
ジュリー・ウォルターズ、ジム・ブロードベント 他
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ
コピーライト:© 2024 STUDIOCANAL FILMS LTD. – KINOSHITA GROUP CO., LTD. All Rights Reserved.
公式サイト: https://paddington-movie.jp/ 公式X:https://x.com/eigapaddington