『ホワイトバード はじまりのワンダー』は、日々を支える幸福感を見つける方法を教えてくれる。幸福感は、小さい物事の中にあって、小さければ小さいほどいい。なぜなら小さいものはどこにでもあるから。それに気づけば、幸福に遭遇する頻度も増える。『ホワイトバード はじまりのワンダー』では、白い鳥(ホワイト・バード)が小さな幸福感の象徴として登場する。タイトルの由来だ。
大ヒット作『ワンダー 君は太陽』と同じ作者R・J・パラシオが、少し前作と関連させて執筆した小説をもとにしているけれど、直接的にはあまり関係を感じない。一番関連しているのは、その温かなテーマ性。
『ホワイトバード はじまりのワンダー』のストーリーのほとんどは、『ワンダー 君は太陽』に登場したジュリアン(ブライス・ガイザー)の祖母が語った話であり、ナチス占領下のフランスで起こる。そんな状況なので、一般的な”幸福”からは遠い。それなのに温かさが残るのは、白い鳥のおかげだ。
祖母サラを演じるのは、ヘレン・ミレン。話のきっかけは、転校してきたばかりの孫ジュリアンとの会話だ。学校のことを聞くと、ジュリアンは、クラスメートとのことを伝え、「普通でいたい」と言う。その言葉にサラはカチンときた。そこで、今まで伝えていなかった若き日のことを話す気になった。
「普通でいたい」という願いには周囲に合わせたい、攻撃にさらされたくないという思いが隠れているのではないかと、サラは思ったのだ。反対に、周囲は気にせず、「自分自身でいたい」という思いを持つことには、自信が必要だ。
祖母サラ語るストーリーには、人を表面だけで見ること、カテゴリーで分ける愚かさ
そこから人を陥れる危険性も含まれている。同時に人を唯一無二の存在として見ることの素晴らしさや奇跡的な出会いの印象はくっきりと鮮やかに心に残る。
ホワイト・バードには、大切な瞬間、心が動く瞬間が、宝石を散りばめるように描かれている。白い鳥だけでなく、納屋の中での空想旅行シーンも忘れがたい。脳内で、パリやニューヨークを旅行する。心はどこまでも自由なものということを見せつけてくれる。
監督は、マーク・フォスター。主な作品に『チョコレート』、『ネバーランド』、『007 慰めの報酬』『ワールド・ウォーZ』、『プーと大人になった僕』など、硬軟取り揃えて描き出す職人監督。『ホワイト・バード』では一人の人間の立体感を鮮やかに描く。
ホワイトバード はじまりのワンダー
監督:マーク・フォースター 『ネバーランド』『オットーという男』
脚本:マーク・ボムバック、R.J.パラシオ
出演:アリエラ・グレイザー、オーランド・シュワート、ブライス・ガイザー、ジリアン・アンダーソン、ヘレン・ミレン
2024年|アメリカ|英語・仏語|121分|カラー|スコープ|5.1ch|原題:White Bird|字幕翻訳:稲田嵯裕里|映倫区分:G
配給:キノフィルムズ クレジット:© 2024 Lions Gate Films Inc. and Participant Media, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:https://whitebird-movie.jp 公式X:@whitebird_movie