『M3GAN/ミーガン』映画レビュー AIとの共存は可能?ミーガンの造形の見事さに酔う

『M3GAN/ミーガン』はAI人形の暴走を描いた映画だが、ソフトな感触がとてもいい。製作チームに、数々のヒット作を手がけたジェームズ・ワンがいる分、作品が楽しめるのは保証付きだ。

突然の事故で、父母を失った9歳のケイティ(バイオレット・マッグロウ)は、叔母ジェマ(アリソン・ウィリアムズ)の家に預けられることになった。最先端のおもちゃ会社で開発の仕事に携わっているジェマは、整然とした一人暮らしを確立している。突然やってきた少女をどう扱うのか。

ケイティが、箱に入ったまま居間の棚に並べられたおもちゃに手を伸ばすと、「それは価値があるものなの。だから、触っちゃダメ」と、言い放つ。夜寝る前に本を読んでほしいとねだると。「ないわ。ダウンロードするから、待ってて」と慌てる。

二人の関係は手探りで進むしかない。おまけに、ケイティの心の傷は、マグマのように深淵で燃え盛っている。

そんな中、ミーガンがやってくる。ミーガンは、新開発のAIロボット。少女と見まごうような愛らしさだ。

ジェマがケイティの面倒を見切れない分、ミーガンがその役割を引き受けてくれる。それだけでなく、ケイティの心の傷に寄り添うスキルも万全だ。特別な相手と絆を結び、それを発展させる自己成長型AIなのだ。

ミーガンは、面白い。優しい。持ち主を守るための残酷さもまた、凄まじい。その造形の魅力に引き込まれる。時にミュージカル仕立てで歌い、時にコミカルなダンスも見せ、お絵描きも得意。

次第に人間味も感じさせてくれる。行き過ぎてしまう、調子外れなところも、ロボットというよりは人間くさい。

過去作へのオマージュも盛りだくさん。チャッキーの『チャイルドプレイ』はもちろん、おもちゃ会社を舞台にした楽しさは『ビッグ』のよう。どこか80年台風味もある。

恐怖シーンが最高潮のところは、『シャイニング』や『ターミネーター』。そして、『リアル・スティール』。人間の動きとともに、ロボットを動かす『パシフィック・リム』も思い出させる。

『M3GAN/ミーガン』は、これから日常になるAIとともに生きる未来を、否定的に描いているわけではなく、それなりの心構えが人間側にあれば、共存できる。そんな夢の未来も感じさせてくれる。

(オライカート昌子)

M3GAN/ミーガン
2023年6月9日(金)全国公開
© 2023 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.
配給:東宝東和
原題:M3GAN
キャスト:アリソン・ウィリアムズ(『ゲット・アウト』)、ヴァイオレット・マッグロウ、ロニー・チェン(『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『クレイジー・リッチ!』) 他
監督:ジェラルド・ジョンストン
脚本:アケラ・クーパー(『マリグナント 狂暴な悪夢』)
製作:ジェイソン・ブラム(『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ、『ハロウィン』、『透明人間』)、ジェームズ・ワン(『ソウ』、『死霊館』、『アナベル』シリーズ)
レイティング:PG12