『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』猫を描いて世界を変えた男の人生に注目!映画レビュー 解説・あらすじ

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコとは 作品解説・あらすじ

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコとは

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』は、19世紀末から20世紀にかけて猫の絵で人気を得た実在のイラストレーター、ルイス・ウェインの生涯が描かれている。

ルイス・ウェイン(1860ー1939)とは
当時のイギリスで知らない人はいないというぐらい人気を博したイラストレーター。作家の夏目漱石や、H・G・ウェルズにも影響を与えたと言われている。彼が猫の絵を描き続けた理由とエネルギーとは何だったのか。『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』では、その秘密が解き明かされる。

19世紀末の猫事情

猫の絵を描き始める前は、ルイス・ウェインも犬の絵を描くことが多かった。理由は、当時はペットと言えば、”犬”。猫は不吉な存在と考える人も多く、家に飼う場合も、ネズミを退治してくれる便利な存在の地位しかなかった。

ルイス・ウェインが猫の愛らしさを発見し、イラストにしたことで、ペットとして猫の地位は確立された。

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』キャスト・監督


ルイス・ウェインを演じるのは、ベネディクト・カンバーバッチ。ルイス・ウェインの天才振りを繊細な演技で、見せてくれる。ルイスが愛し続ける妻、エミリーには、テレビシリーズ「ザ・クラウン」や、『ファースト・マン』、『蜘蛛の巣を払う女』のクレア・フォイ。

ルイスの妹のキャロライン役には、『マンディ 地獄のロードウォリアー』『ザ・グラッジ 死霊の棲む屋敷』、『ポゼッサー』のアンドレア・ライズボロー。ルイスの生涯の友で、ルイスを雇うことになる、イラストレイテド・ロンドンニュース社のオーナー、サー・ウィリアムズに、名優、トビー・ジョーンズ

監督は、俳優としても活動する日系のウィル・シャープ。

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』あらすじ


上流階級に生まれたルイスは、発明家か音楽家を目指す、好奇心旺盛な青年だった。父を亡くした後、母と五人の姉妹の面倒を見なければならないこととなり、家計を支えるため、イラストレイテド・ニュース社でイラストを描くことになる。

彼が初めての恋に落ちたのは、下の3人の妹のために雇った家庭教師エミリー。身分違いの上、年上のエミリーとの結婚は、家族の反対も大きかったが、ルイスは、エミリーとのどかな田舎で幸せな結婚生活を送ることに。ただ、それは長くは続かなかった。エミリーは重い病を宣告されてしまう。

そんなある日、庭に迷い込んだのは子猫。その子猫をピーターと名付け、ルイスはピーターの絵を描き始める。

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ 映画レビュー

『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』は何とチャーミングな映画なのだろう。ダンス映画ではないものの、軽快なダンス映画を見ているような気にさせられる。理由の一つは、ベネディクト・カンバーバッチの変幻自在の演技力と存在感だ。

最初は、身体とエネルギーを持て余しているような若者として登場。田舎の動物フェアっで牛と戦ったままの姿で、汽車に乗り込んでいる。

彼は、やがて妻となるエミリーと出会うけれど、純粋過ぎて、それが恋とは気づかない。その不思議な感覚に流されるように、幸福な世界を夢見る。それは長続きはしないのだけれど。

ルイス・ウェインの人生は、はたから見たら、決して幸せなものではない。お金に悩まされ、子どものころからの浸水や海への恐怖心にも付きまとわれた。姉妹たちも、ルイスの人生の巻沿いにされてしまった。

だが、ルイス・ウェインの素晴らしさは、その人生をバネにして、人を微笑ませ、楽しく不思議な気分にさせる猫の絵を描き続けたことだ。そして、文字通り世界を変えた。猫はそれまで、取るに足らない存在だった。その猫の魅力を人々に伝え、カラフルでポップ、そして時にダークなイラストの力で、猫のペットとしての地位を確立させた。つまり、猫との居心地のいい空間を人々にプレゼントしてくれたのだ

ウィル・シャープ監督の作品世界の成熟度もベネディクト・カンバーバッチの演技力をしのぐほどだ。色彩、カメラワーク、どれをとっても”電気的”魅力ではじけまくる。

”電気”というのは、ルイス・ウェインがよく口にする言葉だ。当時、電気がいかに不思議で魔法めいたものだったかを表現しているらしい。ちなみに、この作品の原題は『The Electrical Life of Louis Wain』。直訳すると、ルイス・ウェインの電気的人生だ。

映画での”電気”の意味は、登場人物の一人によって解き明かされる。この人物は、最初のころに登場し、再び現れるのは映画が佳境に入ったころだ。

ルイスの妹の一人、キャロラインのイメージも実にパワフル。最初の登場では、ナイフを振り回し、怒鳴りまくる。そんな彼女の人生と変化も、映画のバックスクリーンで描かれている。映画の登場人物は、どの役も忘れがたい。でもやはりダントツなのは、猫のピーターだ。撮影中、ずっとカンバーバッチと共にいたこの猫は、一切CGなしで描かれているそうだ。

(オライカート昌子)

ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ 
12月1日(木)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
©2021 STUDIOCANAL SAS - CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION
出演:ベネディクト・カンバーバッチ、クレア・フォイ、アンドレア・ライズボロー、トビー・ジョーンズ andオリヴィア・コールマン(ナレーション)
監督・脚本:ウィル・シャープ 原案・脚本:サイモン・スティーブンソン