『LAMB/ラム』カンヌを騒がせた衝撃作 映画レビュー

『LAMB/ラム』とは
『LAMB/ラム』は、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で受賞、話題作を送り続ける、A24が北米での配給権を獲得し、小規模映画ながら、昨年10月にの全米公開では初登場7位にランクイン、アイスランド映画史上でも最高のオープニングを記録しました。

主演・製作総指揮にノオミ・ラパス。バルディミール・ヨハンソン監督は、この作品が長編監督デビュー。「ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー」などの特殊効果を担当しています。

『LAMB/ラム』映画レビュー

冒頭10分間はセリフがないが、目を凝らしてみなくてはならない。あとでもう一度思い返したいシーンがあるからだ。その10分間は、ほとんど、羊と羊小屋と犬のリアクションで進む。

場所はアイスランド。時期は白夜の季節。荘厳で険しい山を背に、農場が、ひっそりとたたずむ。北欧映画らしく、シンプルなデザイン。居心地の良さそうな家。

ここに住む夫婦が主人公だ。夫婦が朝食の席で、くつろいでいる。映画最初のセリフは、
「時間旅行が可能になったらしい」
「そうなの?」
「理論上だ」
「この先なのね」
「未来は知らなくてもいい。俺は今のままで十分幸せだ」と夫が締めくくる。

ところがどっこい、この夫婦は、思いがけない”幸福”に出会ってしまう。奇矯、つまり風変りな幸せだ。さらに言うと、あってはならない幸せなのだが。

その幸福は決して手放せない。手放してはならない。それがこの映画のストーリーとなる。自然の美しさを背景に、幸福と畏怖が、じっとりと伝わってくる。

密度が濃い映画だ。起きていることをそのまま見せることは、滅多にない。何か大きな出来事があった時、二人が見つめる対象は見せない。リアクション、つまり二人の表情だけをじっくりと時間をとって見せるだけだ。

その表情により、起きた出来事の大きさが伝わってくる。抑えの効いた映画表現と節度は、映画の最後の衝撃まで、映画の端はしに置かれている。

羊のお産の最中に出会った”それ”を、二人は「アダ」と呼ぶ。その愛らしさは、二人をいつも微笑ませる。純粋で健気。それは、夫の弟がやってきて、二人の幸福に水を差すまで純粋な喜びであり続ける。

アイスランドと言えば、安全な暮らしと素晴らしい自然の驚異で有名だ。だが反面、安全と驚異は、危険と脅威に変化しかねない。幸福との出会いもまた、人に危険をもたらすことがあるように。

(オライカート昌子)

LAMB/ラム
公開表記:全国公開中
©︎2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON
配給:クロックワークス 提供:クロックワークスオディティ・ピクチャーズ 宣伝:スキップ
監督:ヴァルディミール・ヨハンソン脚本:ショーン、ヴァルディミール・ヨハンソン製作:フレン・クリスティンスドティア、サラ・ナシム出演:ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン2021年/アイスランド・スウェーデン・ポーランド/カラー/シネスコ/アイスランド語/字幕翻訳:北村広子/原題:LAMB/106分/R15+