映画『オートクチュール』レビュー

人生で望んだあらゆる物を手に入れても、やがては一つ一つ手放すことになる。でも、手放しながらまた、思ってもみなかった新しい世界が広がっていくこともある。そういう意味で、人生の面白さ、素晴らしさは尽きない。

パリ・フランスのファッションブランド、ディオールのアトリエを舞台に、老年に差し掛かった女性と、先が見えない団地育ちの若い女性の出会い、そして二人の関係性が深まっていくストーリーをエレガンスな筆致で描いたのが、フランス映画『オートクチュール』だ。

ディオールのアトリエのトップを勤めるエステルと、若い女性ジャド。接点があるはずのない二人が出会ったのは、パリの地下鉄でエステルがハンドバッグをひったくられたこと。バッグの中には、宗教的なアクセサリーが入っていた。悪い運を引き寄せたくなかったジャドは、エステルにバッグを返しに行く。そこから二つの世界が交差していく。

エステルは、ジャドの繊細な手に目を止める、それは美しいものを作り出していくのに必要不可欠な上、滅多にお目にかからないもの。ディオールのエレガンスの根本にあるのは、お針子の才能と熟練の手業だ。そして美への執念だ。

貧困とその日暮らしで、鬱に悩む母の介護をしていたジャドの興味を引くことができるのか、彼女は、ファッションの頂点への道を進むことができるのか。

映画は、様々な要素を内包しつつ、華やかに軽やかに世界を繰り広げていく。その味は、ディオールのファッションのように、奥深く、しなやかに美しさに満ちている。

(オライカート昌子)

2021年製作/100分/G/フランス
原題:Haute couture
配給:クロックワークス