無限の住人 映画レビュー
勢いと美学がある。そしてこれでもかと言うぐらいの超増量級の殺陣の量。最近の映画では、『ワイルド・スピード ICE BREAK』も『ジョン・ウィック:チャプター2』も、動きのあるシーンが次から次へと大量に描かれている。アクションシーンの大盤振る舞いが最近の流行かもしれない。だとしても『無限の住人』との質量の差は歴然だ。
彼にとっては死は恐怖ではなく、なかなか手に入らない憧れのようなもの。そこには普通の人間とは違う生死感がある。だからこそ、木村拓哉が演じてみせる重力を感じさせないような独特な軽やかさと伸びやかさ、浮遊感が生きてくる。
万次に対して次から次へと敵が襲ってくるわけだが、敵の中でも存在感的な意味で、一番だったのは、尸良演じる市原隼人だ。軽さの万次に対してうっとうしさ、暑苦しさの面で十二分に勝つ勢いだ。一方、悪役ナンバーワンの地位を約束されていたはずの福士蒼汰は、木村拓哉の向こうを張るには少し影が薄かった。無念の情も届かなかった。
となると、万次が戦うべき本当の相手は、誰なのだろう。生と死を分かつ薄い膜のようなものかもしれない。死ぬことを望む不死の男は、生きる目的に出会ってしまう。かつては妹の町を守ることだった。そして今回は、凛を守ること。生きるエネルギーには目的が必要なのだ。
無限の住人
2017年4月29日より全国ロードショー
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/mugen/