クラウド・アトラスは、映画というものの枠を可能な限り広げて見せてくれる。6つのジャンルと時代、それぞれを描きながら、一つに融合させつつ、同時に展開していく。
テーマはずばり、輪廻転生。丁寧にもほとんどの俳優が、6つの時代に違う役で出現する。時代を超える「魂の旅」が、だれにでもわかるように。
スタートの部分では、6つの時代の鍵となる光景が、次から次へと断片的に表現されているため、少しわかりにくい。だが、どう繋がっていくのか興味をそそられるため、一度たりとて退屈に思う時間はないだろう。
面白いのは、ウォシャウスキー姉弟監督と、トム・ティクヴァ監督それぞれが担当する部分により、趣が完全に変わること。
ウォシャウスキー姉弟監督は、大掛かりなアクション大作風の、大航海時代と未来の2つの時代を担当している。ダイナミックだけど大味な印象だ。
現代と現代に近い3つの時代を担当しているトム・ティクヴァ監督のパートは、より緻密でスタイリッシュ。第二次大戦直前の恋愛映画のパートの美しさ、切なさは忘れがたい。恋愛中の二人の関係を会話なしで描き切る潔さにも感動。
どの俳優がどの役で登場してくるのか、宝探し的なワクワク感も、みどころの一つだ。エンディングで「答え合わせ」をしてくれるので、もう一度見たくなるかもしれない。
ラストまで見ると、入れ子状に作られているのがわかる。そして魂の旅は、直線上に続いているだけではなく、過去も未来も現在も、今ここで同時に展開しているのではないかと哲学的な気分にもさせられた。
クラウド・アトラスは映画の枠を外し、人種と時代のバリアを突き抜け、私達の持つ世界観の限界をも飛び越えさせてくれるような映画なのである。
(オライカート昌子)
クラウドアトラス
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