ブラッドリー・クーパー演じる主人公のパットは、ある事件を起こしたことから、家も妻も仕事も失い、精神病院に入院してしまう。実際にストーリーが動き出すのは、母親が迎えに来て退院し、実家に戻るところから。
パットが、懸命に最悪の状況を抜け出していくのが『世界にひとつのプレイブック』の大筋なのだが、軽やかでキュートな語り口で、心温まる作品となった。
監督は『ザ・ファイター』のデヴィッド・O・ラッセル。前作と同じように家族を中心とした極めて小さなコミュニティが舞台。端正な上ておかしみがあり、愛らしさもたっぷりある映画なのだ。
後になって登場してくるヒロインのティファニー(ジェニファー・ローレンス)も、精神のバランスを崩している。パットと二人で精神系の薬談義に花を咲かせるシーンは、かなりユーモラスだ。
ところが、パットは、ティファニーは自分よりずっとイカれていると思い、それを口に出してしまう。人は、他人のことははっきり見えるけれど、自分自身のことは見えないらしい。「君のほうがよっぽどだよ」と、声を掛けたくなるけど、そこは作りの上手さだ。
そこでハッとする。そう思う私自身はどうなんだろうか? 誰もがどこかしら歪みを持っている。自分の歪みを棚において、相手の歪みだけ見て、ほくそ笑んでいないだろうか。誰もパットを笑えない。でも、おかしい。深刻だからこそ面白い。そんな仕掛けがたくさんある。
優れた映画は、汲み取れるテーマが無限にあるんだな、と思わせられた作品。テーマの中の一つは、「精神の健康のためには、体を動かすことが大切だ」。確かにその通りです、本当に。 (オライカート 昌子)
世界にひとつのプレイブック
監督 :デヴィッド・O・ラッセル/キャスト:ブラッドリー・クーパー/ジェニファー・ローレンス/ロバート・デニーロ/ジャッキー・ウィーバー/クリス・タッカー/アメリカ映画/122分/配給:ギャガ
2013年2月22日(金)よりTOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
公式サイト http://playbook.gaga.ne.jp