『マラヴィータ』は、ジグソーパズルを完成させた時のような独特の後味を感じさせるコメディ・クライム作品。最近では製作や脚本に携わることが多いリュック・ベッソンが監督として参加した19作品目だ。
映画には様々な種類があり、時間軸の混乱もわき道もなくひたすらストレートに進んでいく作品もあれば、たくさんの登場人物が独自に複雑な動きをしながら、完成されたラストに導かれるミラクルな作品もある。
『マラヴィータ』は後者である。そんな作品に出会った時の高揚感は、誰もが覚えがあるだろう。大傑作を見た時のような手放しの賞賛はなくても、嬉しさや楽しさは格別だ。
原作は、トニーノ・ブナキスタ作の『隣のマフィア』。舞台は南フランスで、FBI証人保護プラグラムで守られたニューヨーク出身の元マフィアが、妻と二人の子供とともに新しい隠れ家に越してくるところからスタートする。
家族4人は、怒るとなにをしでかすかわからない特技をそれぞれが隠し持っていて、それが家族のチャームポイントなのだが、相当危険でもある。
家長のフランクは、元マフィアらしい暴力的な特技だけでなく、今回新たな特技(趣味)を身につける。隠れ家でタイプライター見つけ、自伝を書くことにしたのだ。そのおかげで、作家のふりをすることに。
制作総指揮で参加している、マーティン・スコセッシ監督作、『グッドフェローズ』の映画上映会が開かれるシーンは見せ場の一つだ。フランクが作家という立場で映画解説をすることになる。お守役のロバート・スタンスフィールドFBI捜査官(トミー・リー・ジョーンズ)は、偽装がバレるのではないかと気が気でない。
そんなことはどうでもいいとばかりに、フランクは「あのシーンの端にいる黄色い服を着た男は、実際に通りで鳴らしたマフィアの一員で~」などと、裏話的なことを嬉々として話し始める。フランク役のロバート・デ・ニーロ自身、『グッドフェローズ』に出演しているのだから、虚実入り混じった雰囲気におかしみがあるし、マフィア映画の中のマフィア映画という設定も面白い。
ジグソーパズル的構造の完成度、コメディのノリ、そして本格的なバイオレンス的手触りも期待以上。フランスを舞台にフランス人監督が作ったマフィア映画という、クロスカルチャーな的な贅沢感もじっくり味わって欲しい。(オライカート昌子)
マラヴィータ
2013年 アメリカ/フランス映画/クライム・ドラマ・コメディ/111分/原題:THE FAMILY・MALAVITA/監督:リュック・ベッソン/出演・キャスト:ロバート・デ・ニーロ (フレッド・ブレイク)、ミシェル・ファイファー(マギー・ブレイク)、トミー・リー・ジョーンズ(スタンスフィールド)、ダイアナ・アグロン(ベル・ブレイク)、ジョン・ディレオ(ウォレン・ブレイク)、ジミー・パルンボ(ディ・チッコ)、ドメニク・ランバルドッツィほか/配給:ブロード・メディア・スタジオ)
2013年11月15日(金)TOHOシネマズ有楽座他全国ロードショー
『マラヴィータ』公式サイト http://www.malavita.jp/