(c)2012 Twentieth Century Fox. All Rights Reserved.
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『オールド・ボーイ』の鬼才・パク・チャヌク監督が『ブラック・スワン』のスタッフと組んでハリウッドデビューを果たしたスリラー。広大な屋敷に暮らす母娘のもとに長年行方不明だった叔父が現れてから不気味な出来事が頻発する物語。キャストは、ニコール・キッドマン、『アリス・イン・ワンダーランド』のミア・ワシコウスカ、『シングルマン』のマシュー・グード。

チャヌク監督はもともと好きで、本作も自分の趣味に適っていた。映画監督が紡ぎだす質感は、国籍を変えて撮ってみるとよりその個性がより顕著に現れるような気がする。人種や舞台がアジアから欧米(またはその逆もあり)に変わるとイメージが一新されるが、監督自身の演出は一貫しているからだ。

本作は、絵本を開いたような様式美が強烈な印象を残す。不自然なほどの完璧さが、返って恐怖を煽るのだ。誕生日ごとに庭に隠された靴のプレゼントを探す少女インディア。彼女の体を這う小さな蜘蛛…。

インディアの叔父(父の弟)は、彼女の父親の葬儀の日に現れる。表情を変える親戚たち。インディアにはその理由が分からないが、彼に対して反抗心と慕情が入り混じった感情が芽生える。一方叔父は、インディアの母親と恋人同士のように振舞いながら、いつもどこかでインディアを見守っている。

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最初、パゾリーニの『テオレマ』のような話かと思ったが違っていた。叔父と関わるごとに少しずつ狂っていくインディアは、次第に攻撃的な性質を見せ始める。地味でお高くとまった女学生として男子生徒の苛めにあっている彼女は、彼らへの反撃を開始するばかりでなく、誘惑さえするようになるのだ。

叔父の過去が明らかになるのは終盤だが、彼の本性は意外にも中盤で明らかになる。インディアは彼と恐ろしい秘密を共有し、それからは花が咲くようにみるみる変化していく。注目のシャワーシーンは、演じるミア・ワシコウスカの新境地とも言える衝撃度にもかかわらず、彼女の透明感は少しも失われていないところがすごい。

少女の体を流れる、叔父と同じ血が蠢き出す。スタッフが同じなので、感覚的には『ブラック・スワン』と似ている。まさに、映画の中のインディアや叔父のように、五感を研ぎ澄まして観る映画だ(ピアノの連弾シーンのイヤらしいこと!)。(池辺麻子)

イノセント・ガーデン
2013年 アメリカ映画/99分/原題:STOKER/監督:パク・チャヌク(『JSA』『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』/脚本:ウェントワース・ミラー(『プリズン・ブレイク』シリーズ/出演:ミア・ワシコウスカ(『アリス・イン・ワンダーランド』)、ニコール・キッドマン(『めぐりあう時間たち』『アイズ・ワイド・シャット』)、マシュー・グード(『シングルマン』) ほか/配給:20世紀フォックス

5月31日(金)TOHOシネマズ シャンテ、シネマカリテ他 全国ロードショー
公式サイトhttp://www.foxmovies.jp/innocent-garden/