結論から言えば、美しく、非常に幻想的な映画。私は『銀鉄』を観ていない。公開当時から今まで、キャラクターが猫であることに抵抗を感じて観たいと思わなかった…というのが理由。今回も、正直その気持ちが変わることはなかった。キャラクターが猫というのは、監督やますむら氏なりの拘りだが、擬人化されている以上、人間のキャラクターでも同じなのではと思えてならないのだ。
個人的な話では、子供の頃、宮沢賢治の作品を好きだった時代があった。でも、何故か詳細を覚えていない作品が多い。多分、「児童文学」という一般的な位置づけに騙され(?)、その実、奥が深くて難解だったことから、幼すぎて付いていけなかったのだと思う。賢治の作品は、神秘的すぎてトラウマを作るほど怖いところがある。本作の原作も、両親に捨てられ(理由はさておき)、妹が誘拐され、そして衝撃のラスト…と、ショッキングな設定が並ぶ。賢治の自伝的要素が強い作品だが、彼の死生観や絶望の美学のようなものが投影されているのだ。
賢治に対して確固たる世界観を持つ人ほど戸惑いそうだが、あまりそのことに執着せずに観た方が、この作品の良さが分かるはず。 (池辺 麻子)
グスコーブドリの伝記
2012年7月7日(土)、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/budori/