味のあるラストシーンは、映画の実力を決定づける。『FPU ~若き勇者たち~』のラストは、まさに映画のクオリティをグイっと押し上げている。
最近の中国映画の質の躍進に気づいているだろうか。エンターテイメント映画は公開されることが多いので、心底楽しめるものに出会える機会がある。2024年だけでも『ボーン・トゥ・フライ』、『流転の地球 -太陽系脱出計画-』、『無名』、『熱烈』など。
東京国際映画祭映画祭などで上映される人間ドラマ系の映画も満足感を与えてくれる映画が多い。国策高揚映画的な、かつての中国映画らしさは払拭され、いい映画を作る意欲にあふれているところがポイントだ。
『FPU ~若き勇者たち~』は、エンターテイメント系。広義なポリスアクションなのだけど、国策高揚的な部分はない。国連平和維持警察隊の活動のため目線はユニバース。国境をはるかに超えた、人間高揚主義的な映画であるところが痛快だ。
中心となるのは、隊長・余衛東(ユー・ウェイトン/ホァン・ジンユー)、新人隊員・楊震(ヤン・ジェン/ワン・イーボー)など中国の組織警察隊FPUの10名。国連からの要請を受け、政府軍と反政府組織の武力紛争が激化するアフリカ・サンタリオン共和国に派遣された。最初はリラックスしていた彼らに、人々が集う広場の警備の指令が下された。簡単な任務のはずだった。ところが広場は一気に緊迫。スナイパーも現われ、一団の人々に狙いを定めていた。FPUにも人々が襲い掛かってきたが、反撃する要請は却下され生身で戦うことに。
サンタリオンでは何が起きているのか。平和を取り戻そうとするFPU の前に思いもよらない事態が見えてくる。彼らは現地の平和を維持し、無事に帰国できるのか。
監督は香港出身のリー・タッチウ。『インファナル・アフェア II 無間序曲』『ラスト・シャンハイ』のアクション振り付けや、ハリウッド映画『マトリックス』ではキアヌ・リーブスのアクションコーチを担当した武術監督出身。製作総指揮に画『インファナル・アフェア』三部作の監督・製作・撮影で知られる巨匠アンドリュー・ラウ。
香港映画出身の監督と製作総指揮二人が奏でる超絶アクションが中国映画の人間ドラマと調和し、これでもかと繰り返される熱さが『FPU ~若き勇者たち~』の大きな見どころだ。
危機が次々と襲い掛かるクライマックスは、身体に熱気が襲い掛かる迫力。思い出したのが、劇場で見た傑作香港アクション映画、『男たちの挽歌』だった。
そして、不意にやってくる、ラストシークエンス。どんなにすごい人間ドラマもアクションも、心がこもったこのラストには敵わない。
(オライカート昌子)
FPU 〜若き勇者たち〜
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1月10日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督:リー・タッチウ 製作総指揮:アンドリュー・ラウ 出演:ホアン・ジンユー、ワン・イーボー、チョン・チューシー、オウ・ハオ
2024年/中国映画/中国語/カラー/5.1chデジタル/101分/配給:ハーク www.hark3.com/FPU