『イコライザー 』映画レビュー

この世は不公平なのが当たり前だと思っていても、不公平が行き過ぎると、決して許してはいけないものも存在する。

見て見ぬふりをしたり、自分じゃなくて良かったとひそかに思ってしまうのは、私のような普通の人間だろう。だけど、世の中には、不公平の天秤を釣り合わせるために働く人もたくさんいる。 そういう種類の人間が”イコライザー”だ。

デンゼル・ワシントン演じるロバート・マッコールもその一人。昼間はホームセンターで働き、眠れる夜には名作本ベスト100を読みながらカフェで過ごす。塵ひとつない家で、過去を隠してひっそりと生きていた。そんな彼に、カフェで話しかけてきたのが、あどけなさが残るティーンの娼婦テリー(クロエ・グレース・モレッツ)だ。身を売る生活をしていても、夢と希望を持ち、ロバートの過去の哀しみも一瞬にして見取る優しい心の持ち主。二人は徐々に心を交わしていく。

テリーが暴力を受けたことで、ロバートの静かな日々は終わり、イコライザーとしての日々がスタートする。 相手は、何人もの悪徳警察官をあごで使うロシアンマフィア一味。ロバートは、テリーを自由にするためにお金を支払うと持ちかける。まず、必ず相手にチャンスを与えるのが彼のやり方なのだ。

申し出を拒否されると、武器すら持たないロバートの熟練技能が炸裂する。その後、トラブル処理係としてテディが、送り込まれてくる。ロバートの能力に勝るとも劣らない凄腕の持ち主だ。頭の良さだけでなく冷酷非道さも群を抜いている。クライマックスはホームセンター。頭脳対頭脳の静かな戦いが繰り広げられる。

シャープなアクションシーンはもちろん楽しめるものの、静かなカフェでのロバートとテリーのやりとりが忘れられない。「完璧より前進」だよとか、「知と心と体」、「思い描いたことは実現する」など、格言めいたものを口にするロバートは、役になりきっているけれど、デンゼル・ワシントン自身の個性の表れにも見える。何気なさを装いながら、まぶただけで感情の揺れを表現するテリーの姿は、胸に刺さる。普通の父娘よりもよっぽどほほえましく、そして痛切。『イコライザー』は、細部こそ一番の見所なのだ。  

(オライカート昌子)

イコライザー
10月25日(土)より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリー他全国ロードショー
イコライザー公式サイト http://www.equalizer.jp/

フライト デンゼル・ワシントン来日会見レポート