『バイオレンスアクション』映画レビュー

ヤクザ映画は、映画の華だ。典型的なものから柔らかいもの、シンプルなものから華やかなものなど、特に日本映画では様々な映画が作られ。人気ジャンルとして映画界の一角を担ってきた。橋本環奈主演の『バイオレンスアクション』は、楽しさ、新機軸という点で、ヤクザ映画にフレッシュな風を吹き込んでいる。監督は、「おっさんずラブ」「極道主夫」などの瑠東東一郎監督。

一見ごく普通のカワイイ系の若い女性のケイは、プロの殺し屋だ。昼間は専門学校生として、日商簿記の検定2級合格を目指す。バイトとしての殺し屋稼業では、百戦錬磨のひたむきなプロだ。そのミスマッチ度が魅力的だ。

ヤクザの跡目争いの端を発した抗争で、ケイは依頼を受ける。事の善悪には関わらない。自分の感情は心から切り取る。仕事は選ばない、断らない。一度受けた仕事は寡黙にきちんとやり遂げる。それが彼女の流儀だ。

ケイの、機械のような無駄のなさで仕事に臨む姿は、何も抱えることのな若い女性ならではのシンプルさを感じさせる。洗練され尽くした技術を駆使し、依頼に応える。ケイのゆるふわキャラと”非情”の組み合わせは、この映画のみどころだ。

バスの中で足りない小銭を貸してくれたビジネスマン風の男、テラノにケイは、ひそかに心惹かれるが、テラノもヤクザの一員だった。そのうち、彼女の標的になってしまうのだろうか。もちろんそうなる。テラノは親友を狙われ、病院送りにされてしまったことがきっかけで、跡目争いの渦中で裏金の存在を知る。金を奪ってそれを明らかにするために暗躍していたのだ。

非情な仕事を無感情でやり遂げるケイの支えになっているのは、”小さな希望”だ。それを胸に仕事をやり遂げる姿は、鮮やかに心に刻まれる。彼女は、プロの殺し屋だけでなく、人生の達人にすら見えてくる。

テラノ役の杉野遥亮、ケイに思いを寄せる同級生・渡辺役に鈴鹿央士、ほかに馬場ふみか、森崎ウィン、大東駿介、太田夢莉、佐藤二朗、城田優、高橋克典、岡村隆史が出演。城田優がミュージカル系暗殺者としていい味を出しているところも見逃せない。

(オライカート昌子)

バイオレンスアクション
8 月 19 日(金)、全国の映画館で公開
©️浅井蓮次・沢田 新・小学館/『バイオレンスアクション』製作委員会
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
原作/浅井蓮次・沢田 新「バイオレンスアクション」(小学館「やわらかスピリッツ」連載中)
監督:瑠東東一郎
脚本:江良 至、瑠東東一郎
出演:橋本環奈、杉野遥亮、鈴鹿央士、馬場ふみか、森崎ウィン、大東駿介、太田夢莉
佐藤二朗、城田優、高橋克典 / 岡村隆史 ほか
製作:「バイオレンスアクション」製作委員会 制作プロダクション:ファインエンターテイメント
2022年製作/111分/PG12/日本