『教皇選挙』映画レビュー 華麗さと軽やかさの調和

映画『教皇選挙』に感嘆したのは、軽やかさだ。描かれるのは、バチカン、カトリックの総本山、教皇庁の最大のイベント。次期教皇を選ぶ選挙コンクラーベだ。システィーナ礼拝堂などの華麗な建築の様式美と、衣装の鮮やかな赤。映画『教皇選挙』を重厚な映画だと思う人も多いだろう。

厚さや堅苦しさを華麗に描くの背景だ。美術、衣装、品格のある画が、世界観となる装置をがっちり固めている。前面ではスムースかつ軽やかに、コンクラーベの内幕と舞台裏の人間ドラマが進んでいく。重さと軽さの二極性に魅かれる。

軽やかさは、ストーリーの運びを担う俳優たちの動きだ。主演のローレンス枢機卿を演じるレイフ・ファインズを始めとした、スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イタリア人俳優のセルジオ・カステリット、イザベラ・ロッセリーニのベテラン勢の上手さ際立つ余裕の演技だ。

一つ一つのシーン、表情、感情と思考の細やかな変化。これほどの演技巧者が勢ぞろいし、壮絶な選挙戦を戦うわけだから、見ているだけでため息がでる。

『教皇選挙』の軸は、ミステリー。次期教皇を投票していく選挙の行方、先代教皇の死を巡る謎。そして世界中からコンクラーベのために集合した100人超の枢機卿たち。有力候補が、それぞれ真実の姿をあらわにしていく。出来事が起こり、ひとつの謎が解けると、その先にはさらに謎が待っている。まるで謎が生き物のように見えてくる。

これほど様々な興味を掻き立て、ラストに謎が明かされた時に訪れる打撃は、最大級。背景と前面で起きているドラマを鮮やかな手並みで料理し、百戦錬磨のベテラン勢を率いたエドワード・ベルガー監督の力は抜群に冴えている。『教皇選挙』は、思い出す度に笑顔になってしまう。見ごたえのある一作。

(オライカート昌子)

教皇選挙
2024年製作/120分/G/アメリカ・イギリス合作
原題または英題:Conclave
配給:キノフィルムズ
劇場公開日:2025年3月20日