『ドリームランド』映画レビュー

いつか行きたい場所、いつか手に入れたい夢の生活。ドリームライフを手に入れるための、最初の一歩は、踏み出せるだろうか? 『ドリームランド』の主人公、17歳のユージーンは、アリソンという一人の女性との出会いによって、夢への一歩を踏み出そうとする。彼の旅路は、簡単ではなく、苦味もあったし、暴力もあった。

1930年代のアメリカテキサス。荒れた土地、厳しい生活。その対比として挟みこまれる夢の土地の映像。『ドリームランド』は、ストーリーも舞台もシンプルで直球的。印象度は強い。

ユージーンの夢とは、幼いころに去ってしまった父親に会うこと。荒れ地に入植した人々は、砂嵐や悪天候にも阻まれて、過酷な状況に直面していた。それに耐え切れず、ユージーンの父親は、逃げ出してしまっていた。メキシコからのたった一枚の葉書が、ユージーンの元へと届いた唯一の名残だ。

母親は警官と再婚し、義理の妹がいる。ユージーンの物語は、妹によって語られる。「強すぎる憧れは、危険であることを兄は教わらなかった」と、妹は語る。

もし、ユージーンが、アリソンに会わなかったらどうなっていただろう。いつかは、夢をかなえるための行動に出たかもしれない。新たな夢に取って代ったかもしれない。単調だが平穏で、彼の母親や義理の父親が送っているような日々。

アリソンは美しいけれど、危険な女だった。銀行強盗をして、人殺しもしたと言われていた。まだ若いユージーンを巧みに操ることもできた。

アリソンを演じているのは、プロデューサーも兼ねているマーゴット・ロビー。最近では、DCコミックのキャラクター、ハーレイ・クインを演じ、波に乗っている。彼女が演じるアリソンは、悪魔的。やさぐれているけれど、無垢な魅力も放っている。肌から活気が立ち上るような、なまめかしさも香る。アリソンは、出会うことで、ダイナミックに人生を変転させていく存在であり、マーゴット・ロビーの演技は、映画を引っ張る力を見せる。

無法者が行き交う、やせた土地での逃避行を描きつつ、『ドリームランド』は、大切な人がいるからこそ、危険に飛び込んでいく家族の物語として結実する。

どんな道を選ぼうとしても、多少の危険はある。それを承知で動けるかどうか。突き動かされるのは、単に夢や欲望のためではなく、結局、大切な誰かのためなのだということを『ドリームランド』は思い出させてくれる。

オライカート昌子

ドリームランド
4/9(金)新宿武蔵野館ほか全国公開
(C)2018 DREAMLAND NM,LLC 
PG-12 
監督:マイルズ・ジョリス=ペイラフィット 
出演:フィン・コール マーゴット・ロビー トラヴィス・フィメル ギャレット・ヘドランド
2019年/アメリカ/英語/101分/カラー/シネスコ/5.1ch/日本語字幕:安藤里絵 配給:ハピネット 配給協力:ギグリーボックス 
(C)2018 DREAMLAND NM,LLC PG-12 公式サイト:dreamland-movie.jp