『ハリー・ポッター』シリーズは、完結編にして大傑作シリーズと姿を変えた
原作の小説もそうだと思うが、映画も、『ハリー・ポッター』シリーズには熱狂的なファンがいる反面、そこまでではない、見てもいいけどそこまで傑作なのだろうかと、醒めた目もある一般的ファンの、二極化した観客がいたと思う。双方の観客の支持を得て、空前絶後の壮大なシリーズが幕を閉じる。
まず、完結までもっていった底知れないエネルギーに拍手をしたい。メインキャストはほぼ同じ(ダンブルドア校長が代わったのはご存知の通り)十年もの長期シリーズ、当初は、完結までの原作も発表されていなかったのだから、この先どうなるなるのか、製作陣も雲をつかむようにスタートしたのだと思う。
それが幸せなことに齟齬もなく、中断もなく、全作品が支持されヒットし、キャストも健やかに成長し完結までたどり着いた。最初は子供向け?と思えるような典型的な魔法ファンタジーだったのが、ハリーの天敵ヴォルデモートが復活した『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』から(同時に現監督のデヴィッド・イェーツが担当するようになってから)、どんどん陰鬱な雰囲気となり、大人も納得のダークテイストなファンタジーと趣を変えていった。
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』は抜群に面白い。シリーズの持ち味でもある、魔法を使ったワクワクする場面はちゃんとあるし、戦いの場面は、まるで『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』さながら。
シリーズ全体の謎も伏線も、ちゃんと回収される。その上、もうひとつの影のストーリーが姿を現す。どんな物語にも登場人物の数だけストーリーが隠れているとは思う。だがシリーズ最終回に至って、それが合わせ鏡のように浮かび上がるのには驚いた。
大人の観客には、もうひとつのストーリーと、もう一人の主人公の方が、ずっと興味深く感じられるはずだ。『ハリー・ポッターと賢者の石』から全作品を見直したい、と強く思う人も多いと思う。
だが一番のみどころは、全8作で主役を張ってきたハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフが最終話で見せてくれる、圧倒的な演技力だ。最後の方の場面では、迫力もあり美しくもある類まれな表情を見せてくれる。
そこまでの成長を見越して彼を配役したとしたら、キャスティングディレクターの眼力に恐れ入るしかない。だが、本人の努力と献身がなければ、シリーズを背負い続けることもできないし、ここまでの成功もなかったはずだと思う。シリーズは最終話にして、大ヒットシリーズだけではない、傑作シリーズと呼ぶべき称号を手にできたのではないだろうか。(オライカート昌子)
これが、最後。
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』
7月15日(金)丸の内ピカデリー他全国ロードショー<3D/2D同時上映>
公式サイト:http://www.deathly-hallows.jp
ワーナー・ブラザース映画配給
“ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2 レビュー(感想)” への2件のフィードバック