わたしたちはみんな過去を背負って生きている。現在に集中しているから、過去になんかこだわらない、という強い人もいるけれど、ほんの一握りだろう。意識しないことぐらいはできるとしても、消すことはできない過去。だとしたら、大事に宝物のように握りしめているほうがいいのかもしれない。
『ワンダーウーマン』は、過去を大切にしている女性の物語だ。彼女は飛びぬけて美しいだけでなく、スーパーパワーも持っている。けれど中身はごく普通。そのあたりが、今夏のアメリカでのベストヒット映画となっている理由だ。まさか、これほどワンダーウーマンに共感できるとは思わなかった。
ワンダーウーマンは、DCコミックだが、イメージは、『マイティ・ソー 』ミーツ『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャーズ』。
『マイティ・ソー』のように神話の世界、女性だけが暮らす島、アマゾンを舞台にスタートする。『マイティ・ソー』は、北欧神話の雷神トールをベースにしていて、ソー(トール)が現代の地球にやってくるミスマッチが面白かった。ダイアナ/ワンダーウーマンが第一次大戦時代のロンドンにやってくるところでも同じ種類のコミカルさが描かれる。
『キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャーズ』が第二次世界大戦時代を描き、時空を超えた愛情の切なさも描かれていたけれど、この映画は、そのあたりもパワーアップしている。
『ワンダーウーマン』最大の特徴は、超大作のコミック原作スーパーヒーローアクション映画で初の女性を主人公とした映画で、監督も女性のパティ・ジェンキンスであるところ。ヒーロー映画特有のダイナミックなアクションはもちろん楽しめる。
キモは、まっすぐで乙女チックで、型破りなプリンセスダイアナ/ワンダーウーマン(ガル・ガドット)のキャラクターだ。彼女の強さも男性とは違う種類のもの。それを女性特有の視線で描いているので、今までのヒーロー映画にない、どこかウェットな感覚を呼び起こす。
アマゾン島で少女だったダイアナが、女戦士のトレーニングを真似するところからして、愛らしくて微笑ましい。戦士のリーダー、アンティオペをロビン・ライトがたくま しくしなやかに演じているのも嬉しい。
外部から隔絶され、古代そのものの生活をしていた女性だけの島の近辺でに、ある日、戦闘機が不時着する。それを目撃したダイアナが、パイロット、スティーブ・トレバー(クリス・パイン)を助けたところからストーリーが動き出す。
全米年間ナンバーワンの映画は、去年は、『スター・ウォーズ/ローグワン』、今年は今のところ、『美女と野獣』が1位で、2位に『ワンダーウーマン』。3位以下を大きく引き離している。どれも女性が主役の映画だ。
以前のハリウッドは完全な男社会だった。最近のハリウッドの映画は、女性が大きく関わっている映画も大きな勢力となってきているのを感じる。時代は変わるのだ。
ハンカチを握り締めて、ぜひ、『ワンダーウーマン』誕生映画を見るために 劇場へ行こう。
ワンダーウーマン
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/wonderwoman/