
迷宮映画にはゾクゾクさせられる。A24スタジオ製作の『異端者の家』は、布教に出かけたシスター二人が、町はずれの一軒家に誘い込まれてしまう。その家は迷宮さながらだった。シスター・パクストン(ソフィー・サッチャー)とシスター・バーンズ(クロエ・イースト)は脱出できるのか。
その家は、布教リストに入っていたし、彼女たちの安全策も講じてあった。玄関先に出てきたのは、男性のリード氏(ヒュー・グラント)。彼女たちは男性一人の家には、入らないことになっている。なぜ足を踏み入れてしまったのか。
入ってしまったところから、A24スタジオならではの知性がのぞくサスペンス世界が展開される。
リード氏をヒュー・グラントが演じていなければ、説得力は低下しただろう。最近は悪役でもヒュー・グラントにしか出せない魅力を全開させている。『異端者の家』でも、ヒュー・グラント節が炸裂。素顔をさらけ出し始めると得体の知れなさと寒気が、スクリーンに色濃く漂う。
そうでなくても只者ではないヒュー・グラント。俳優としての底力は相当なものがあるのだろう。対する二人のシスターの胆力にあふれた姿にも感銘。両者がっぷり四つになって、脱出対封じ込めの戦いが繰り広げられる。
迷宮は箱モノだけではない。この映画は心理的迷宮にもターゲットを定めている。神とは何か、信念とは? というテーマが背後にある。そう、そこまで行ってしまうのだ。テーマ自体が迷宮のようだ。24スタジオ作品のホラーサスペンスの奥深さに舌を巻く。
ところで、この『異端者の家』には、トファー・グレイスも出演している。元スパイダーマンのヴェノム役で、最近作は、メル・ギブソン監督の『フライトリスク』。選りすぐりの映画にしか出ないことで知られている。『異端者の家』では、何かしてくれるのか、肩透かしなのか、ギリギリのところに位置する彼にも注目だ。監督・脚本は、「クワイエット・プレイス」の脚本家スコット・ベック&ブライアン・ウッズ。
異端者の家
4 月 25 日(金)TOHO シネマズ 日比谷ほか全国公開
監督/脚本:スコット・ベック、 ブライアン・ウッズ
キャスト:ヒュー・グラント、ソフィー・サッチャー、クロエ・イースト
原題:Heretic|2024 年|アメリカ・カナダ|字幕翻訳:松浦美奈 上映時間:1 時間 51 分
配給:ハピネットファントム・スタジオ
公式 HP:https://happinet-phantom.com/heretic/
© 2024 BLUEBERRY PIE LLC. All Rights Reserved.