スタイリッシュでロック。熱い戦いを見逃すな
『タイタンの戦い』、『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』に続き、『インモータルズ -神々の戦い- 』で再びギリシャ神話の世界が3Dスクリーンで躍動。監督は映像の魔術師、ターシム・シン監督。その名に恥じないマジカルな映像の豪華絢爛さと、熱い闘いの光景が、心をぎっしり掴んで離さない。
ストーリーはギリシャ神話のキャラクターを借りて作られ、独自に構成されたいわば二次創作だ。それにより、伝統に縛られない自由な展開が可能になった。悪役のハイペリオン(ミッキー・ローク)も、主役のテセウス(ヘンリー・カヴィル)も弱みもある血が通った人間くささを持っていて共感を呼ぶし、オリンポスの神々の描き方が極めて独創的。
以前の作品ではリーアム・ニーソンや、ショーン・ビーンが重々しく演じた天空神ゼウス役は、『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』でも三銃士の一人アラミスを演じ、人気急上昇中のルーク・エヴァンスだ。若いゼウスは、重厚さとは無縁な軽妙さで天空を飛翔する。
ゼウスをはじめとしたオリンポスの神々全てが、この世のものとは思えない美しさを持ち、インモータル(不死)の存在を誇示している。難を言えば、一見ウルトラ兄弟に見えなくもないし、ゼウスは何を考えているのかもよくわからない。
子供たちの神々は親の言いつけを無視するし、しかもみんな戦いに凄く強いわけでもない。戦争のさなかにゼウスは子供にも怒鳴られたりする。神々には人間にうかがい知れないいろんな事情があるのかもしれない。そんな神々の事情と人間同士の戦いが時に交錯しながらストーリーが展開していく。
ミッキー・ロークは、『アイアンマン2』でも悪役を演じ、メジャー復帰したが、まだエンジン全開とは言いがたかった。今度こそ本領発揮である。憎憎しさとチャーミングさは、トップスターだったときの面影を彷彿させる。新スーパーマンを演じることが決まっている主演のルーク・カヴィルは、肉体美と存在感で傑出しており、ちょっとあか抜けないところがよい。狙っているのかどうかは不明だが。
一見絵画を見ているような美しい映像は、監督が理想のギリシャ世界を追求し、それに成功していることを示していると思う。それでいてロックでモダンな世界は、古臭さを微塵も感じさせない。間違いなく劇場で見るべき作品。
インモータルズ -神々の戦い-
2011年 アメリカ映画/111分/監督:ターセム・シン・ダンドワール/出演:ヘンリー・カヴィル (テセウス)、ミッキー・ローク(ハイペリオン)、ジョン・ハート(老人)、スティーヴン・ドーフ (スタブロス)、フリーダ・ピント(パイドラ)、イザベル・ルーカス(アテナ)、ルーク・エヴァンス (ゼウス)、ケラン・ラッツ(ポセイドン)ほか/配給:東宝東和/R15+
2011年11月11日(金) TOHOシネマズ 日劇ほか全国ロードショー
オフィシャルサイト http://immortals.jp/
(オライカート昌子)