『バーン・クルア 凶愛の家 』絶品タイ発ホラー 3段構えの魅力

アジア映画が熱い。日本映画も繊細さを生かした新境地開拓が著しい。中国映画の品質、韓国映画の円熟度はご存じの通り。他のアジア映画も高レベル映画の劇場公開や配信が増えてきている。

タイ映画では、愛らしさに溢れた『ふたごのユーとミー 忘れられない夏』が公開され話題になった。『バーン・クルア 凶愛の家 』は、タイ発最新ホラー映画の絶品だ。タイでは世界的な大ヒットの大作映画を跳ね除け、三週連続一位を記録。ソーポン・サクダピシットが監督を務める。彼は“家系ホラーの巨匠”とも呼ばれている。

『バーン・クルア 凶愛の家 』の主人公は、ニン。夫のクウィンとともに7歳の娘のインを幸せな家庭で育てようとしている。ある日彼女が持っていた賃貸マンションで困った事案が発生。借家人が部屋を荒らして消えてしまったのだ。

金銭的な理由もあり、バンコクの閑静な住宅地にある夫名義の本宅を人に貸し、修復しながらマンションの方に住むことを夫に提案。夫は反対するが、何とか本宅の借家人を受け入れ、引っ越しにまで漕ぎつけた。しかしその後、不気味な問題が次々と発生。やがて家族の危機にまで発展していく。

『バーン・クルア 凶愛の家 』の魅力の一つは、三段構えのところ。違う人物の視点で三つのパートに分かれている。同じシーンを違う人物と違うカメラの角度で見せるのは、『羅生門』方式だ。心理的な事だけではない。隠されていたその人物の歴史や出来事が加わるため、厚みが生み出される。まさか、そうくるとは! 意外性がストーリー設計の主眼。視点が変わるたびに恐怖と深みが増大していくところも見どころだ。

ホラー系アジア映画は、恐怖や驚きだけでなく、生きることの苦悩や悲しみまでもじっくり見せてくれる。恐怖も単純ではない。アジアのじっとりとした気候や歴史、文化が独特な質感を作り出している。新たなる恐怖へようこそ。

(オライカート昌子)

バーン・クルア 凶愛の家
11月22日(金)より、シネマート新宿ほか全国順次公開
配給 : ギークピクチュアズ
配給協力 :ギグリーボックス
Ⓒ 2023 GDH 559 AND ALLY ENTERTAINMENT (THAILAND) CO., LTD.
GDH & N8 スタジオ 提供
JORKWANG FILMS 製作
ソーポン・サクダピシット監督作品
主演: ニッター・ジラヤンユン、スコラワット・カナロス、ペンパック・シリクン
プロデューサー: ジラ・マリクン、ワンルディー・ポンシティサック
脚本: ソーポン・サクダピシット、タニダ・ハンタウィーワタナ
エグゼクティブプロデューサー:ジーナ・オーソットシン、
ブッサバー・ダーオルアン、パイブーン・ダムロンチャイタム、クリス・イアムサクンラット、チャヤンポーン・テーラタナチャ

共同プロデューサー: タナヌット・エブラヒム、チ