映画について書くことはしょせん虚業である。世の中が危機に陥ったら一番初めにいらなくなる。そうわかっていても何かを語りたくなるのは、伝えたい相手がいるからだ。「たったひとりに向かって一生懸命に書きなさい、ただし周りの10人を退屈させないように」という映画評論家・山田宏一氏の言葉は、書くことの傲慢さをたしなめ、書くことの歓びを教える。膨大な数の映画の中からたった10本を選ぶという行為は不遜だが、わたしの2011年を活性化してくれた映画に敬意を表するつもりで挙げる。
2011年ベストムービー10位から6位
2011年ベストムービー5位から1位
家業としての犯罪に手を染めずには生きられない町の男たち。その生態と葛藤、激情、脱出までを躍動感あふれる映像で描く野心作。初監督のベン・アフレックはサービス精神旺盛で頼もしい。
人生は思いどおりにならないことの連続だが、自分のいまいる位置を知って走り続けることにはきっと意義がある。光石研が等身大で演じる“ある中年男の物語”は世代を超え、生きる普遍性に迫る。
スポーツウーマンとして進む道を突然断たれた女(リース・ウィザースプーン)が、新たな道と真のパートナーを見つけるまでを描く極上のラブ・コメディ。脇をかためるジャック・ニコルソンらの余裕綽綽の演技もご馳走だ。
うす汚れてくすぶっている男たちの内面の輝き。「あんたは正義の味方にはなれないネ」、「いいんだ、俺は便利屋なんだから」。瑛太と松田龍平が背を縮めるようにして演じる無器用な男たちの姿は、はにかみに満ちて感動的だ。
CGアクションに胸打たれたのは初めてかもしれない。アンディ・サーキスによって魂を吹き込まれた猿人は雄々しく、わたしの胸をわしづかみにする。たとえ人類が滅んでも世界は終わらない。皮肉と希望に満ちた最高のエンディングである。
(内海 陽子)
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