『いつかの君にもわかること』は見るべき映画?ポイント解説 映画レビュー

いつかの君にわかること 見逃したくないポイントとは

いつかの君にわかること 解説・監督・キャスト

いつかの君にもわかることとは
『いつかの君にもわかること』は、『おみおくりの作法』のウベルト・パゾリーニ監督・脚本の最新作。『おみおくりの作法』は世界で旋風を巻き起こし、日本でも阿部サダヲ主演、「舞妓 Haaaan!!!」の水田伸生監督で『アイ・アム まきもと』としてリメイクされた。

『いつかの君にもわかること』の主人公は、窓ふき掃除人のジョン。余命わずかの33歳のシングルファーザーだ。4歳の息子マイケルの新しい家族を探す過程が、爽やかに描かれている

第77回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門に正式出品。。第36回ワルシャワ国際映画祭で観客賞を受賞。

『いつかの君にもわかること』キャスト
ジョンを演じるのは、ジェームズ・ノートン。今年37歳のイギリス人俳優。『赤い闇 スターリンの冷たい大地で』、『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』、『フラットライナーズ』などに出演。次期ジェームズ・ボンド最有力とも言われている、要チェック俳優だ。

ジョンが息子のために新しい家族を探す手伝いをする新人ソーシャルワーカー、ショーナの役には、『ブルックリン』、『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』、『彼女たちの革命前夜』のアイリーン・オヒギンズ。

いつかの君にわかること あらすじ

33歳で余命宣告を受けた窓ふき掃除人のジョン(ジェームズ・ノートン)。今まで一人で4歳の息子・マイケルを育ててきた。彼がやらなくてはならないのは、マイケルが今後一緒に暮らす“新しい家族”を探すこと。研修中のソーシャルワーカーのショーナ(アイリーン・オヒギンズ)と、里親候補の家族と面接をしている。だんだん身体は弱っていく中、彼はマイケルのためにどのような決断をするのか。

いつかの君にもわかること 見逃したくないポイントとは

ジェームズ・ノートンの抑制の効いた演技

ジェームズ・ノートンは、今後必ず人気が出てくるはずだ。実力と、ゴージャスな容貌を兼ね備えた俳優として、ぜひ注目したい。『いつかの君にもわかること』では、抑制のきいた演技が好感と共感を呼ぶ。次期ジェームズ・ボンドとして名前が挙がっているのも当然だ。

理想的? 父子の関係

子どもを持つ人は、子どもに素晴らしい人生を送らせたいと思うもの。だが、じきに死を迎えるジョンにはできることが限られている。体力的にもギリギリの生活。ジョンは、息子のマイケルとしっかりと向き合おうとする。残された時間が少ないからこそ、見えてくる二人の姿は理想的だ。

養父母選択の過程で見えてくる人々の真実の姿

ジョンは、マイケルの新しい家族探しのために、里親候補の家族の面接を繰り返す。
その過程で様々な家族の姿を目撃することになる。金持ち? 大家族? とにかく養父母になりたい人? ジョンが下す真剣な選択とは? 様々な人に出会うことで、見えてくる人々の姿には真実の断片が散りばめられている。新しい人々に会うのは、スリリングな旅にも思えてくる

死に対する考え方の変化

ジョンの死に対する考え方の変化は、最大限の見どころの一つだ、たった一人の息子を残していかなくてはならない。その事実をどうマイケルに伝えるのか。

映画を通じて、ジョンの死生観は変わっていく。光が射していくような心温まるものに変化することは可能なのか。死に対する会話と心理の変化は決して見逃せない。

いつかの君にもわかること 映画レビュー 必殺アイテムの伏線回収と、窓からのぞく風景の二重性が見どころ


『いつかの君にもわかること』は、窓拭き掃除人のジョンが、近々この世を去る前に、一人息子の4歳のマイケルのために新しい家族を探す物語。優しい気持ちになれるだけでなく、様々な贈り物を心に残してくれる映画だ。

ウベルト・パゾリーニ監督監督が並べる様々なアイテム、仕掛けが、『いつかの君にもわかること』の味わいを香り高いものにしているところに注目したい。

アイテムは、なにげなく登場する。例えば、風船、おもちゃのトラック、落書き、手袋、誕生日ケーキのろうそく、道路の白線など。

二重の意味を持ち、あとで効いてくる。その伏線回収に出会ったときに、思わず膝を手でたたきたくなる。手のしぐさ、横断歩道を渡り方さえ、単なるシーンにはならない。後々どのように生きてくるのか。

ジョンが、マイケルのために新しい家族を探す。その過程は、ジョンのこれまでの人生もうかがわせてくれる。さりげなく。

ジョンが過ごしてきた33年間は、決して長くない。何か凄いものを成し遂げてきたわけでもない、それでも彼に対する愛おしさが、全身を浸す。

窓拭きという仕事も、二重の意味を持っている。ジョンは、仕事中、窓の中で繰り広げられる、”誰か”の人生を見る。自分の人生と比べることもある。横柄な客に腹立たしい思いを抱くこともある。

里親候補に出会うことも、彼らの人生を窓からのぞくようなもの。考えれば、映画を見ること、作ること自体、誰かのフレーム内の人生をのぞき込むことだ。

限られたフレームで、いかに豊かな物を伝えるか。そういう意味で、『いつかの君にもわかること』は、描かれないこと、最小限に描かれていることも含めて、広々とした時空間を感じさせてくれる映画だ。

なぜなら、ジョンの過去と、マイケルの未来が、合わせ鏡となって、さらにマイケルの幸せな人生を暗示させてくれるから。最後のショットは、マイケルのこれからの人生が幸せのイメージとして立ち上がっていく、忘れがたいショットになっている。

さらに、いつしか、ジョンとマイケルの立場が、ゆっくりと逆転していくようでもあり、マイケルが映画を引っ張っていくようにも見える。それほどマイケルの成長は素早くまばゆい。

(オライカート昌子)

いつかの君にもわかること
2月17日(金)より、YEBISU GARDEN CINEMA他全国順次公開
配給: キノフィルムズ
© 2020 picomedia srl digital cube srl nowhere special limited rai cinema spa red wave films uk limited avanpost srl.
監督・脚本:ウベルト・パゾリーニ
出演:ジェームズ・ノートン、ダニエル・ラモント、アイリーン・オヒギンズ
2020年|イタリア、ルーマニア、イギリス|英語|95分|カラー|ビスタ|5.1ch|原題:Nowhere Special |
字幕翻訳:渡邉貴子|映倫G
提供:木下グループ 配給:キノフィルムズ