
『SUPER 8/スーパーエイト』は、製作で参加もしているスティーブン・スピルバーグ監督の80年代の作品、特に『E.T』を意識した作品だ。郷愁を感じてしまうのは、わたしもまたJ・J・エイブラムス監督とほぼ同じ世代だからだ。
SUPER 8とは8ミリフィルムで撮る映写機のこと。街で騒動が起ころうと、得体の知れないものが跋扈しようと、主人公の少年たちは、8ミリフィルムで撮る映画作りをあきらめようとしない。J・J・エイブラムス監督が一番描きたかったのは、映画作りに情熱を燃やしたころ、初恋に胸を焦がしたころの青春の思い出であることはあきらかだ。

そして、さまざまなテーマを内包していることが、この作品のいいところでもあり、物足りないところでもある。郷愁をかきたてるドラマにだけに焦点を当てれば、J・J・エイブラムス監督の持ち味のシャープなアクション描写が薄くなってしまう。かといって、アクション・サスペンスだけを描けば、監督にとって今までやってきたことと何の変わりもない。
ただ、作品の後味と個性を考えると、J・J・エイブラムス監督の思惑を超えて、アクション・サスペンスのシーン満足度のほうが高い。やっぱり、J・J・エイブラムス監督は、J・J・エイブラムス監督。スピルバーグにはなれなかったのかもしれない。決してそれは、悪いことではないのだけれど。(オライカート昌子)
・2011年 アメリカ映画/114分/監督:J・J・エイブラムス/出演:ジョエル・コートニー、エル・ファニング、カイル・チャンドラー、ロン・エルダードほか、
『SUPER 8/スーパーエイト 』オフィシャルサイト
・2011年6月24日(金) 全国超拡大ロードショー