『ブルックリンでオペラを』映画レビュー

自分サイズの幸せと、マジカルスクリーンサイズ
『ブルックリンでオペラを』には、相当お洒落なアン・ハサウェイも登場する。その様子は、『プラダを着た悪魔』並み。タイトルも、一見楽しいラブコメ的に思える。

ところが、それは罠かもしれない。『ブルックリンでオペラを』は、恋愛要素はあるものの、丸ごと人間賛歌映画なのだ。しかも、力づくの。

それがわかるのは、中心人物のオペラの作曲家役スティーブンに、演技・存在感抜群の『ゲーム・オブ・スローンズ』のピーター・ディンクレイジを配していること。さらに、マリサ・トメイの登場。オスカー女優にしてトム・ホランド版『スパイダーマン』のメイおばさん。

マリサ・トメイは、2011年の傑作映画『ラブ・アゲイン』で押しの強い教師を演じていたが、『ブルックリンでオペラを』には、『ラブ・アゲイン』を思わせる部分がある。マリサ・トメイの役柄は特にそうだ。そして、三世代の恋愛模様を描いた『ラブ・アゲイン』と同じように、『ブルックリンでオペラを』でも、若い世代の恋愛、中年の恋愛、夫婦の問題等、4組のカップルが登場。等身大の幸せを求めていく。

アン・ハサウェイが演じているのは、精神医パトリシア。彼女自身もも精神分析が必要そうだ。夫のスティーブンは鬱状態が続いていて、注文されたオペラが書けない。パトリシアは、彼に「散歩に行けば」と、アドバイス。「パターンを破るのよ」という言葉とともに。

そこから、予想の斜め上の展開となる。「She Came to Me」というのが、原題だけど、その通りのことが起こる。何がどこからやってくるのかわからない、その突発的な出来事は、まさしくパターンを破る。新たな自分が隠れ家から飛び出してくる。

『ブルックリンでオペラを』には、隠し鍵のような設定がある。それは、画面のサイズが変わるところ。そのシーンでは、当人にとって、マジカルな時間が流れている。嬉しい、楽しい、心が動く、心が躍る。ワクワクする。集中する。その経験は、それぞれの登場人物の内面も行動も変えていく。

現代オペラの世界が描かれているだけでなく、ブルース・スプリングスティーンによる主題歌が第81回ゴールデングローブ賞歌曲賞にノミネートされたのも話題の映画だが、音楽に関しては、それだけではない。映画の後半にも注目したい。みんなで歌う「Keep On the Sunny Side」のシーンがいい。危機や困難があっても、陽の当たる面を見ていこう、という歌だ。すべての音楽、そしてストーリーを通じて、人生応援映画となっている。果たして自分には、マジカルスクリーンサイズはあるのか、あるとしたらいつなのか、それを意識するのもいいかもしれない。

(オライカート昌子)

ブルックリンでオペラを
公開日 4月5日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、シネリーブル池袋他全国ロードショー
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配給:松竹
監督・脚本:レベッカ・ミラー 
音楽:ブライス・デスナー(「カモンカモン」「レヴェナント: 蘇えりし者」)
撮影:サム・レヴィ(「レディ・バード」「フランシス・ハ」)
出演:アン・ハサウェイ(「プラダを着た悪魔」「レ・ミゼラブル」)、ピーター・ディンクレイジ(「シラノ」「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズ)、マリサ・トメイ(「いとこのビニー」「スパイダーマン」シリーズ)
2023年/アメリカ/英語/102分/ビスタ/カラー/5.1ch/原題:She Came To Me/日本語字幕:高内朝子/G  
提供:松竹、楽天