『悪魔と夜ふかし』映画レビュー メインディッシュは70年代の栄光のテレビ黄金時代

『悪魔と夜ふかし』を見て、最初に思い出したのは、映画『NOPE ノープ』だった。テレビ番組生放送中に何かが起きた。起きてはいけないことだし、見せてもいけないことだった。

『NOPE ノープ』でのテレビ番組の事故シーンは、一部に過ぎないけれど、『悪魔と夜ふかし』は、裏も表も全てを見せてくれる。お腹がいっぱいになるほどに。

『悪魔と夜ふかし』は、1977年。お洒落で能天気なトークショー「ナイト・オウルズ」の、司会者ジャック・デルロイ(デヴィッド・ダストマルチャン)の紹介から始まる。ラジオ番組の司会から、テレビのショーの司会に大抜擢されたジャックは、才能と愛嬌でニッコリさせてくれるタイプ。

けれど、浮き沈みの激しいテレビの世界で生き残るのは至難の業だ。ジャックは視聴率を浮上させるために、とんでもないことを考え出す。それは、スタジオに悪魔を呼び出すことだった。

『悪魔と夜ふかし』の悪魔、オカルト、超常現象という素材は、強いインパクトで引っ張るけれど、メインディッシュは別にある気がする。

70年代のテレビの世界だ。そのころのテレビ番組は、夢と憧れの世界へと招き入れてくれた。玉手箱のような存在だった。

今ではほとんど死語となった「お茶の間」で、誰もがテレビに引き込まれていた。日本の70年代は、『シャボン玉ホリデー』、『8時だョ!全員集合』、『コント55号の世界は笑う』などがあった。当時のワクワクした世界が、『悪魔と夜ふかし』にはある。生バンド、勢い、笑い、驚嘆。

『悪魔と夜ふかし』は、演者の巧みな演技と個性がぴったりとハマり、展開のスムーズさが、次第にレベルマックスのシーンにつながっている。最近のオーストラリア映画は見逃せないものが多い。

ところで、オカルト、悪魔に関しては、根深さを感じる。なぜこれほど、悪魔関係の映画が多いのだろう。事実無根なのなら、これほど長い間、多数の作品が作られている理由がわからない。

悪魔と似ているものがあるとすれば、人間の心にとりついた根深い欲望だろうか。欲望があり、何かがそれを叶えてくれると近寄ってきたら、拒否するには相当な強さが必要だ。『悪魔と夜ふかし』が示唆しているものは底堅い。

監督は、オーストラリア出身の兄弟コリン&キャメロン・ケアンズ

(オライカート昌子)

悪魔と夜ふかし
10月4日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか
全国順次ロードショー!!
©2023 FUTURE PICTURES & SPOOKY PICTURES ALL RIGHTS RESERVED
配給: ギャガ
監督・脚本・編集:コリン・ケアンズ、キャメロン・ケアンズ
出演:デヴィッド・ダストマルチャン、ローラ・ゴードン、フェイザル・バジ、イアン・ブリス、
イングリット・トレリ、リース・アウテーリ
原題:LATE NIGHT WITH THE DEVIL
オーストラリア|カラー|ビスタ|5.1ch|93分|字幕翻訳:佐藤恵子|PG-12