『ダム・マネー ウォール街を狙え!』映画レビュー

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』は、無謀な戦いに挑む人々を描いたエキサイティングな映画だ。どのように無謀かって? その答えは、そのまま『ダム・マネー ウォール街を狙え!』というタイトルに含まれている。ダム・マネー とは、愚かな投資(資金)という意味でウォール街の勝ち組、ヘッジファンド側が、一般人を差している言葉だ。

友人に映画好きの投資家にいる。『ダム・マネー ウォール街を狙え!』という映画は、一般投資家が、ヘッジファンドに挑む話と言ったら、「勝てるわけないよ、あり得ないよ」と、言い切った。だが、この映画は実話の映画化だ。ニュース映像もたっぷりとある。

『ダム・マネー ウォール街を狙え!』は、ヘッジファンド側の狼狽した朝から始まる。空売りしていたゲームストック株が、じりじりと上昇。このままでは大損害となる。ゲームストック株が上昇するなんてありえないことなのに。

ここで、主役の登場。マサチューセッツ州の会社員キース・ギル(ポール・ダノ)だ。彼は、全財産5万ドルをゲームストップ社の株に注ぎ込んでいた。ゲームストックは、ゲーム販売会社。ネットでのダウンロード販売に押され、業績は悪化中。だが、キースの指標分析によると、ゲームストックの株価は、過小評価されている。

彼は、赤いハチマキにネコのTシャツ姿で、「ローリング・キティ」を名乗り、動画配信をし、彼の指標分析を公開。彼の動画を見ていた人々が彼の主張に賛同し、ゲームストック株を買いだしていた。

ここから億万長者のヘッジファンド対一般投資家の前代未聞の闘いが始まる。舞台はウォール街だが、見ている感覚は、『300 スリーハンドレッド(2007)』や、『ブレイブハート(1995)』など、勇気や信頼、熱さを感じさせる戦争映画のようだ。

世界は刻々と変わっている。今まであり得ないことが起きる時代。スマートフォンやSNSの普及によって、一般市民同士がつながり、可能になったことも多い。

映画の中では、利益を超えた大義、個人投資家による革命、ウォール街を民主化したい、階級闘争という、固くて熱い言葉が躍るが、映画自体は、明るく楽しい。ユーモアや温かみは、闘争という言葉から一番遠い。映画として楽しめるところが、何といっても『ダム・マネー ウォール街を狙え!』の一番のみどころだ。

さもなければ、これほど豪華なキャストが集まることはないだろう。ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、アンソニー・ラモス、セバスチャン・スタン、シャイリーン・ウッドリー、セス・ローゲン。驚きのカメオ出演者もいる。マスクをとるまで、誰だかわからない。マスクを取るのは一瞬なので、見逃さないように。

(オライカート昌子)

ダム・マネー ウォール街を狙え!
2月2日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:キノフィルムズ
© 2023, BBP Antisocial, LLC. All rights reserved.
監督:クレイグ・ギレスピー
原作:ベン・メズリック 脚本:ローレン・シューカー・ブラム&レベッカ・アンジェロ
出演:ポール・ダノ、ピート・デヴィッドソン、ヴィンセント・ドノフリオ、アメリカ・フェレーラ、ニック・オファーマン、
アンソニー・ラモス、セバスチャン・スタン、シャイリーン・ウッドリー and セス・ローゲン
2023/アメリカ/英語/105分/カラー/5.1ch/ドルビーデジタル/スコープ/原題:DUMB MONEY/字幕翻訳:橋本裕充
配給:キノフィルムズ 提供:木下グループ 公式サイト:dumbmoney.jp X:@DumbmoneyJP