『ケナは韓国が嫌いで』映画レビュー 納得できる人生のために何をするのか

韓国の若者が海外移住して国籍放棄している。その数は毎年2万人。映画『ケナは韓国が嫌いで』の主人公ケナ(コ・アソン)は、空港からニュージーランドへ向かおうとしている。彼女も海外移住組の一員となったわけだ。

映画は一年前に戻る。海外移住を実行するまでが描かれる。ケナはずっと不機嫌だ。ケナは28歳の会社員。家から会社まで片道2時間。やっと会社に着くころには疲れ切っている。会社のこともよくわからないし、与えられた仕事の意義もわからない。

父母妹は、小さな家でギリギリの生活をしているが、それ以外に問題はなく、大学時代から付き合っている恋人ジミョン(キム・ウギョム)は優しい。卒業して就職したらケナを養うつもりだと言っている。誰から見ても、ケナは恵まれている。

だがケナはそう思っていない。仏頂面。苛立っている。寒いのも嫌。寒いから韓国も嫌い。ニュージーランドへ行ったからと言って、彼女が幸せになったのか。

決断し、行動し、問題があろうとなかろうと進んでいく姿はまぶしく、励まされるような気がした。ケナは人一倍強いわけではない。迷うし、揺れる。上手くいかないこともある。人生では当たり前の現実。

母娘の印象的な会話がある。「お母さんは自分のやりたいことをやろうと思ったことはないの?」
「娘たちが元気で幸せなことを望んでいるんだよ」。
世の母親には否定できないセリフ。きっと誰もが納得して自分の人生を選んでいる。

主人公ケナを演じるのは、コ・アソン。ポン・ジュノ監督『グエムル-漢江の怪物-』(06 年)で天才子役として鮮烈な印象を残した。監督は「第2のホン・サンス」や「韓国の是枝裕和」と称され、世界から注目を集めるチャン・ゴンジェ。

原作者は元新聞記者のチャン・ガンミョン。国家情報院の世論操作事件を題材にした小説「コメント部隊」も映画化され、日本でも公開された。

(オライカート昌子)

ケナは韓国が嫌いで
2025 年 3 ⽉ 7 ⽇(⾦)ヒューマントラストシネマ有楽町、
新宿武蔵野館、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
配給:アニモプロデュース
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監督・脚本:チャン・ゴンジェ『ひと夏のファンタジア』
出演:コ・アソン『グエムル-漢江の怪物-』 チュ・ジョンヒョク「ウ・ヨンウ弁護⼠は天才肌」
キム・ウギョム イ・サンヒ オ・ミンエ パク・スンヒョン
2024 年/韓国/韓国語・英語/107 分/カラー/原題:한국이 싫어서/⽇本語字幕:本⽥恵⼦