『世界のはしっこ、ちいさな教室』映画レビュー

笑顔、意欲、献身に出会ったとき、見ている側にもエネルギーが届く。『世界のはしっこ、ちいさな教室』は、小さな教室で教える女性の先生と、生徒たちの姿を描いたドキュメンタリー。映画に満ちた意欲とエネルギーは、爽やかさそのものだ。

登場するのは、できることを精一杯やり切る3人の女性。アフリカのブルキナファソの新人教師、サンドリーヌ。バングラデシュ北部のボートハウス教室の教師、タスリマ。そしてロシアの広大なシベリアの遊牧民エヴェンキ族出身で、遊牧民のキャンプへ移動教室を届けるスヴェトラーナ。どこも子どもたちにとって、基本的な教育を受けるのすら困難な場所。3人の女性教師たちの仕事は貴重だ。

ふたりの子どもの母でもあるサンドリーヌは、首都から600km離れた村に赴任する。生活水すら川に頼り、携帯の電波も届きにくい。家に帰れるのは半年後。でも、サンドリーヌはそんな程度ではくじけない。ブルキナファソ編では、落ちこぼれになりそうな少年がドラマの鍵になる。

バングラデシュ編では女性の地位が極めて低い現実の中、22歳のタスリマは、試験を受けさせ、中学へ行く夢が拓く未来を、子どもたちに提示していく。水害で村の半分が水没してしまう中、教室船が生徒たちを迎えに行く。子どもたちは、自立する未来へと目を向けていくドラマが展開していく。

シベリア編のスヴェトラーナは、勉強する機会がほとんどない遊牧民の兄弟に、丁寧に教えながら、エヴェンキ族の伝統や遊牧の実習も伝えていく。

教師にとっても、生徒にとっても、困難は並大抵のものではないけれど、爽やかに乗り越えていく。自由と強さを感じさせる未来が待っていることを確信させてくれる映画だ。

(オライカート昌子)

世界のはしっこ、ちいさな教室
© Winds – France 2 Cinéma – Daisy G. Nichols Productions LLC – Chapka – Vendôme Production
7月21日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督:エミリー・テロン 製作:バーセルミー・フォージェア『世界の果ての通学路』 
ナレーション:カリン・ヴィアール『エール!』 出演:サンドリーヌ・ゾンゴ、スヴェトラーナ・ヴァシレヴァ、タスリマ・アクテル
2021年/フランス映画/仏語・露語・ベンガル語/82分/原題:Être prof/英題:Teach me If you can/字幕翻訳:星加久実
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ 提供:ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム hashikko-movie.com