『ハヌ・マン』映画レビュー インド映画のお手本アクションアドベンチャー

シンプルに楽しむためには、インド映画が一番。そのお手本のような映画が『ハヌ・マン』だ。2024年1月にインド公開されるやいなや、全土で大ヒットを記録。辺境の田舎町に住む平凡な若者が、スーパーヒーローに変化していく。

最初に登場するのは、小さいころから強い志を持って、スーパーヒーローになると誓う少年、マイケル(ビナイ・ラーイ)だ。彼が、主人公だと思いきや、突然びっくりさせられる、とんでもない行動に出るのだ。

マイケルは、スーパーヒーローになるためなら、なりふり構わない。歯止めの効かない意思と欲望が、彼を埋め尽くす。都会に住む彼は、夢を実現することができるのか。

一方、田舎に住んでいる青年、ハヌマントゥ(テージャ・サッジャー)がいる。彼は心優しいが、振る舞いは、褒められたものではない。いわば、コソ泥であり、猿にもバカにされるレベル。姉は、ふがいなさを嘆くし、ほとんどの村の住人から見ると、彼は、ろくでなしに近い。

彼は、小さいころから恋をしている。相手は村のマドンナ、ミーナークシ。彼女の側は、他の村人同様に、彼をどうしようもない青年だと思っている。ハヌマントゥが恋を成就するためには、高い壁を乗り越えなくてはならない。そんな折、村で騒動が起きる。

マイケルの意思の強さ対、ハヌマントゥの心優しさ。スーパーヒーローになりたい欲望対、淡い恋心。その対比は鮮やかだ。

『ハヌ・マン』には見逃せないポイントがある。まず、主人公が若い。今までのインド・テグル語映画が、成熟した強い男を主人公に起用していたのに比べ、ハヌマントゥ演じるテージャ・サッジャーは、モデルかと思うほどの姿がいい。実際にモデル出身ということ。

次に高い評価だ。ロッテントマト、IMDBのような海外のサイトでも、軒並み高評価だ。その理由として、『ハヌ・マン』が、ヒーローズジャーニー映画のお手本のようなストーリーだというところにある。

弱い平凡な若者が、やがて力を得るけれど、もちろんそれだけでは人々を支え、助けることはできない。彼は重い試練を乗り越えなくてはならない。その重さは想像を超えるインパクトで圧倒される。

『ハヌ・マン』の監督/脚本は、プラシャーント・ヴァルマ。インド版ゾンビ映画『Zombie Reddy』(21・未)を手掛けている。

(オライカート昌子)

ハヌマーンとは?
ヌマーンは古代インドの叙事詩『ラーマーヤナ』で活躍する猿の将軍。ラーマ王子と共に羅刹王ラーヴァナと戦った英雄で、風神ヴァーユと天女アンジャナーの息子。実はシヴァ神の化身でもあり、力持ちで、山を持ち上げ空を飛ぶこともできるインド神話のスーパーヒーローです。『西遊記』の孫悟空のモデルになった説も。

邦題『ハヌ・マン』は、本作の原題表記(英語/テルグ語共に)主人公がハヌマーンのようなスーパーヒーローになるという所に引っかけたシャレとして、「Hanuman」ではなく「Hanu-Man」としている事にならい、カタカナ表記で「ハヌ・マン」としています。
(『ハヌ・マン』公式サイトより)

ハヌ・マン
10月4日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー!
配給:ツイン
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