『青春18×2 君へと続く道』映画レビュー

現在・過去そして未来への旅へと誘われる
台湾映画は、数々の名作を世に送り出してきた。日本映画もそうだ。『青春18×2 君へと続く道』は、日本と台湾の合作映画。台湾映画と日本映画のポイントがギューと詰まっている。

台湾での出来事は、台湾映画風、台湾と言えば、夏。二人乗りバイクや屋台、屋外バスケットボール、恋の始まり、青春の爽やかさがスクリーンから溢れ出ている。

日本で起きる出来事は、日本映画らしさが香る。雪を背景に、川端康成の『雪国』、岩井俊二監督の映画『ラブ・レター』が、引用され、青春を後に残した大人のほろ苦さが散りばめられている。監督は、日本人の藤井道人だが、台湾と日本の映画の特徴をうまくまとめている。

台湾を訪ねたのは、日本の旅人アミ(清原果耶)。18年後、日本を旅するのは、台湾人のジミー(シュー・グァンハン)。

スタートは現代の台湾。ゲーム会社を成功させ、全てを得たかのように見えたジミー。ところが、それは一瞬のうちに消えてしまう。挫折。何をしていいのかわからない。傷心のジミーは、台南の自宅へ戻る。父は、一休みするいい機会だと言うのだが。

部屋を眺めていたジミーは、一枚のはがきを手に取った。それは、忘れえぬ人、アミから来たはがきだった。

『青春18×2 君へと続く道』は、旅の映画でもある。現実的な旅をする映画でもあり、18年前の出来事へと心を向けていく心の旅でもある。心の旅は、現実と合わさり、重層的な世界がスクリーンに広がっていく。そこが、『青春18×2 君へと続く道』の一番の醍醐味だ。

18年前、2006年。ランタン祭りでのこと。ジミーは、アミと一つの約束をした。夢を見つけ、夢をかなえるために頑張って、頑張って、頑張りぬく。

ジミーは、夢を叶えたけれど、その間失ったものもあった。ジミーの旅は、人生を振り返る旅、そして未来へ向かう旅。それはきっと今も続いている。

18年前、2006年。あなたも、きっと、幸せや、輝く未来を予測していただろう。夢はかなえられただろうか。今の生活にどれぐらい満足しているだろうか。多分、満足はしているけれど、100%とは言えないというところだろうか。だったら、旅をしてみるのはいかが?

『青春18×2 君へと続く道』は、現在の旅、過去への旅、そしてそれを踏まえた未来への旅へ、私たちを誘う。

(オライカート昌子)

青春18×2 君へと続く道
5月3日(金) TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
©2024「青春 18×2」Film Partners
配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:藤井道人
キャスト:シュー・グァンハン  清原果耶
ジョセフ・チャン  道枝駿佑  黒木華    松重豊  黒木瞳