スパイダーマン:スパイダーバース映画レビュー・あらすじ
『スパイダーマン:スパイダーバース』を見て、震えがくるほど興奮してしまった。私が人並み以上にスパイダーマンが好きというのも理由の一つではあるけれど。(スパイダーマンが好きじゃない人がいるだろうか)スパイダーバースには、スパイダーマン好きの、心の琴線に触れる描写があり過ぎなのだ。
アニメだからといって敬遠するには、あまりにももったいない。モダンで美的。エッジの効いた素早いシーン展開で心をとらえる。スパイダーマンの神話的世界を感情を揺さぶるストーリーとして結実させている。
主役はマイルス。半分アフリカ系アメリカ人と半分プエルトリコ人の13歳の少年だ。たまたま成績優秀で(くじで当たって)地元のブルックリンを離れ、エリートの進学校に転校したばかり。そんな彼が蜘蛛に噛まれる。
初めはマイルスには、何が起きたのかわからない。そのころ、誰もが愛するスパイダーマン/ピーター・パーカーが、街を守っていた。ピーターに危機が訪れ、マイルスはその場に居合わせてしまう。ピーターは、彼に代わってマイルスに街を守るように頼む。マイルスはスパイダーマンとなり、街を守ることができるのだろうか。
スパイダーマン:スパイダーバースには、魅力的なシーンが山ほどあるのだが、私が一番好きなシーンは、冒頭のマイルスが音楽を聴きながら絵を描いているシーンだ。誰にも邪魔されない至福の時間。
彼はまだ、この後、ヒーローになるための試練の数々にさらされるのを知らない。子供時代の守られた世界から一歩飛び出さなければならない。恐怖や抵抗感を乗り越えて。それがこの映画のテーマでもある。
大いなる力は、大いなる責任を伴うという言葉はもちろん、親愛なる隣人等、スパイダーマンシリーズを貫く精神も健在だが、今までの作品以上に親近感を抱かせてくれるのは、これが普遍的な物語だからでもある。
仲間に出会い、自分の力に目覚める。得た力をどう使うのか。人を助けるために使うのか。それには勇気も必要になる。力に見合う勇気ある選択ができるのだろうか。
なぜ私がスパイダーマンが好きなのか、改めて再確認させてくれる作品でもあることに。とても感激させられる。
スパイダーマン:スパイダーバースを10倍楽しむための見逃せないポイントとは
ポイント1 スパイダーマン:スパイダーバースはアカデミー賞をはじめ、数々の賞を受賞。残念ながらラジー賞はノミネート止まり。
『スパイダーマン』シリーズは人気シリーズですが、今までは技術賞やMTVムービーアワード以外は映画賞とは無縁。スパイダーマン:スパイダーバースは、アカデミー賞長編アニメーション、ゴールデングローブ賞、英国アカデミー賞等、賞を総なめにしました。
おまけにラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)にもノミネート。名誉挽回賞部門です(前年の最低作品賞がソニー・ピクチャーズ作品の『絵文字の国のジーン』だったため)
ポイント2 原作コミックの風味を生かす革新的アニメーション技法
ソニー・ピクチャーズアニメーションとしては、最大の180人のアニメーターを雇用。手描きとCGを融合したダイナミックな映像は、今まで見たことのないビジュアル世界に投げ込まれたような気分にさせられます。
通常のどのショットも手描き・CGの両方を含んでいるため、通常の2倍以上の手間と時間を掛けているとのこと。
監督は、ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマンの三人です。
ポイント3 スタン・リーの遺した言葉
スパイダーマンの生みの親、スタン・リーは、マーヴェルコミック原作映画にカメオ出演するのが有名。普通は通りすがり程度の出演なのですが、『スパイダーマン:スパイダーバース』では長いせりふがあります。
スタン「彼が人を助けたのは、単純に、それはすべきだし、しなければならいことだからだ。そしてそれをするのが正しいことだから、疑うこともなかった。それがスーパーヒーローというものだ。彼がいないと寂しくなるな」
マイルス「このコスチューム、合わなかったら返してもいい?」
スタン「誰にでも合うよ、結局」
2018年11月、『スパイダーマン:スパイダーバース』の公開前にこの世を去ったスタン・リー・まるで彼自身について言っている様なせりふに聞こえませんか。
ポイント4 最強のメイおばさんをはじめ、豪華な声優陣
メイおばさんの役は、いずれもアカデミー賞にノミネート・受賞の女優が演じています。初代のサム・ライミ版で、ローズマリー・ハリス、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズで、サリー・フィールド、実写版最新シリーズの『スパイダーマン・ホームカミング』でマリサ・トメイ。そして今回は、リリー・トムリン。
メイおばさというと、家庭的なイメージがありますが、リリー・トムリン演じるメイおばさんは。今までのメイおばさんのイメージを覆す、最強メイおばさんとなっているのにも注目です。
(オライカート昌子)
スパイダーマン:スパイダーバース
2019年3月8日(金)全国公開
オフィシャル・サイト
http://www.spider-verse.jp/site/