「オーストラリアの兵士がベトナムに遠征して、
なぜ多くの地元兵を殺戮しなければいけなかったのか。。。
ほとんど大義名分が感じられないから見ていて辛いヨ」
これが、一足先に見た知人の感想。
同感だった。
昔であれば、西部劇かな。
今となって考えりゃ、そこにも大義名分なんて無かった。
アメリカさんの西部劇では先住民、たとえばインディアンが悪者だった。
あと組の移民者、たとえば白人を襲う、そして生皮を剥ぐ悪者だった。
だから何千本と作られた当時の西部劇では
ハンサムな、たとえば二重アゴなんかの白人が主人公。
美女を抱き寄せ、迫り来る矢をかいくぐり、白い歯を見せながら、
ライフルをくるくると回し連射してバッタバッタとインディアンを倒していく。
子供ごころに爽快感があった。
夢の中でも憧れの的だった。
でも、今じゃこんな映画は作れない。
作ったら、『風と共に去りぬ』のようにバッシングされちゃう世の中だ。
『デンジャー・クロース 極限着弾』は、ベトナム戦争で
オーストラリア軍と南ベトナム解放民族戦線(ベトコン)が繰り広げた
「ログンタンの戦い」を映画化したオーストラリア版戦争アクションである。
1966年8月18日未明の南ベトナム。
ヌイダット地区にあるオーストラリア軍司令部の基地が
ベトコン部隊による砲撃を受ける。
ハリー・スミス少佐率いるオーストラリア軍の部隊が
敵の砲弾発射地点を突き止めるため偵察に向かうが、
農園地帯のロングタンで敵部隊に包囲され、容赦ない攻撃にさらされてしまう。
味方からの応援も容易に駆けつけることができないジャングルで
絶体絶命の危機に陥ったスミス少佐の部隊は、基地本部に連絡し、
目前にいる敵への後方から迫撃砲=「極限着弾(デンジャー・クロース)」を要請する。
極限着弾。それは接近戦の地にミサイルを撃ち込むこと。
味方に対して超至近距離で撃つことになり、
当然味方も巻き添えになる危険な作戦だ。
数あるベトナム戦争映画の中でも、「地獄の黙示録」を意識して作られた?
慰問シーンがあって、ホットパンツの女の子が兵士の前で歌う。
酒や麻薬の効果もあってか、若者は狂ったように踊る。
曲は、フランク・シナトラの長女ナンシー・シナトラのヒット曲「にくい貴方」。
原題は、「These Boots Are Made for Walkin’」。
これらのブーツは突破するためにある、と説くか。
「目の前にある、やるべきことに全力を惜しまない貴方がステキ!」と
エールを送るように歌い続ける。
だから若き兵士たちはひるまない。
デンジャー・クロース(極限着弾)も恐れない。
見終わって、どう思うのか。
これが監督の気持ちだろう。
ベトコンが虫けらのようにどんどんと撃ち殺されていく場面に違和感を感じるか、これが戦争の真実と憂いに沈むか、いやいや、これぞ異国で散った若き兵士たちの鎮魂歌と読むのか。
ラスト、そしてエンドクレジットに監督の意図が現れる。
それはオドロキ以外、他にない。
『デンジャー・クロース 極限着弾』
6月19日(金)より新宿バルト9ほか、全国公開中
監督:クリフ・ステンダーズ(『殺し屋チャーリーと6人の悪党』)
脚本:スチュワート・ビーティ(『コラテラル』)
出演:トラヴィス・フィメル(『荒野にて』)
ルーク・ブレイシー(『ハクソー・リッジ』)
リチャード・ロクスバーグ(『サンクタム』)
2018年製作/118分/G/オーストラリア
原題:Danger Close: The Battle of Long Tan
配給:彩プロ
© 2019 TIMBOON PTY LTD, SCREEN QUEENSLAND AND SCREEN AUSTRALIA