今一番はずれのない俳優が送る恐怖コメディ
映画に外れのない俳優・女優がいる。女優ならサンドラ・ブロック。(きわめて個人的な意見だが)。ラジー賞を受賞した『ウルトラ I LOVE YOU!』でも十分魅力的だった。俳優なら、トビー・マグワイア。どの作品を見ても一定の質を保っていて見てよかったな、と思える。
そして今一番外れがないと思う俳優が、『モンスター上司』でパワハラを受けるニック役のジェイソン・ベイトマンだ。日本では主演ヒット作がないので、知らない人もいるかもしれない。しかし最近の活躍ぶりはめざましいものがある。神経質そうなのに脱力している妙に癒し系なテイストがハリウッドでは重宝されているのだろう。
『モンスター上司』では、ジェイソン・ベイトマンのニックを筆頭に、理不尽なハラスメントに悩まされる部下たち3人が登場する。情け容赦のない上司役たちを演じるのは、ケヴィン・スペイシー、ジェニファー・アニストン、コリン・ファレルの三人。彼らの運命の転変がブラックな笑いとともに描かれる。
上司たちの怪演が凄すぎて、上司排除計画を企てる部下たちに共感を抱いてしまう。そこがまず恐ろしい。コリン・ファレルはキャリアを投げ打つ覚悟なのではないかと思える迫力だし、ジェニファー・アニストンは、肉食系セクハラ歯医者を嬉々として演じている。
なかでも一番恐ろしいのはケヴィン・スペイシー演じるパワハラ上司だ。幾分大げさにしろ、どこかに本当にいるのではと思わせるところが薄気味悪い。部下たちをバーで見かけて声をかけてくる昔の級友は別の意味で怖い。以前は出世頭でリーマン・ブラザースに勤めていたとか。今の境遇が哀れすぎる。
怖さとスリルと毒と笑いが散りばめられている映画がつまらないわけがない。見終わるのがもったいないと思わせる脚本の巧みさも必見。ストレスがある人には特にお勧め。見終わったときのスッキリ感は尋常でない。
モンスター上司
2011年 アメリカ映画/監督:セス・ゴードン/出演:ジェイソン・ベイトマン、チャーリー・デイジェイソン・サダイキス 、ジェニファー・アニストン 、 コリン・ファレル 、ケヴィン・スペイシー 、ジェイミー・フォックス 、ドナルド・サザーランド ほか
オフィシャルサイト http://wwws.warnerbros.co.jp/horriblebosses/index.html
(オライカート昌子)