近未来を舞台にした超不条理映画。監督はフランスの新鋭ジャン=バティスト・レオネッティ。本国フランスでは、過激な内容を考慮して限定公開された注目作だ。
徹底した管理社会の下、人類は家畜と社畜に分けられ、弱者を判別する実験の不合格者は人肉ミンチにされるという世界。主人公のフィリップは少年時代に母親が自殺し、施設で育つ。本人も一度自殺を図るが、同じ施設の少女に助けられる。やがて2人は成長して結婚。2人は弱者判別実験=能力テストを強いる社畜となり、不自由のない生活を送りながらも夫婦仲は破綻している。
全編、冷たく無機質な印象を受ける映像である(綺麗に整理整頓されているが、生活臭が全く感じられない部屋のように)。外では時折、国民の出産報告が公共放送で流れている。自殺者や殺害された者は、即座に業者によって遺体が工場へ運ばれ、ミンチにされる。様々な場所でその肉を口にする人間たち。
凄まじい内容ながら流血は殆どなく、暴力シーンも最小限という演出。台詞も決して多くない。実に淡々と展開していく様が、逆に直接的な描写より恐ろしい。興味深いのは弱者判別実験。テストそのものは非常にシンプルなのに、無理難題な課題を出される。しかし、よく考えれば答えの出るものもある。人間が生きる力を試す、象徴的な場面だ。非現実的な物語とは言え、この世界を取り巻く環境の片鱗は、既に現代社会に芽生えつつある。自由を奪われた人類の狂気が抑圧され、それが日常化することの恐怖に背筋が寒くなる(それでも、自殺防止ネットはいいアイディアかもしれない)。
俗っぽい好奇心を持って鑑賞するべからず。エンタメ性は低く、ただ衝撃は強い。
(池辺麻子)
カレ・プラン
4月6日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてロードショー