ロバート・レッドフォード監督作品を見るとき、いつも感じるのは、正統的で真面目。かつ格調高い映画を作る人だなあ、ということ。俳優・女優の演技面から外面的なものまで、最上のものを引き出そうとする姿勢を感じる。アカデミー賞受賞監督だからだけではなく、俳優出身監督だからこそなのかもしれない。
例えば、FBIでのスーザン・サランドンとシャイア・ラブーフの対決シーン。カメラは見たことがないほど美しく二人の瞳を映し出す。シャイア・ラブーフも、見たことのない顔で、熱血切れ者記者を演じてみせる。
かと思うと、ニック・ノルティ、サム・エリオット、クリス・クーパー、リチャード・ジェンキンス、スタンリー・トゥッチ、ジュリー・クリスティ等、豪華過ぎる大御所俳優たちは、彼らの円熟した、いつもどおりの演技をしてくれて頼もしい。
シャイア・ラブーフが演じるジャーナリスト、ベン・シェパードの役柄は、日本映画の『凶悪』の藤井(山田孝之)役に似ていないこともないが、悠然としたユーモアを散りばめているところなど、いかにもアメリカ的。だが真実への執着の度合い、ねっとりとしたしつこさは相当なものだ。
30年間逃げおおせてきた元過激派グループ”ウェザーマン”の逃亡犯が逮捕される。それが地元だったことで、過激派逃亡メンバーが他にもいるのではと、追求を始めるベン・シェパード。彼は、ひょんなところから名前が出た地元の社会派弁護士ジム・グラント(ロバート・レッドフォード)の様子を不審に思い始める。
ハラハラする逃亡劇とラストの思いがけない真相は、エンターテイメントの王道を行く作りで楽しめる。それでも一番意外だったのは、77歳になるロバート・レッドフォードの驚異的な若さだ。ジョギングもするし、全力で走るし、男手ひとつで女の子も育てる。
インディペンデント映画のために私財を投じてサンダンス映画祭をスタートさせたように、今も映画のためによほど節制しているのだろう。かつての代表的な美男俳優、ロバート・レッドフォードの色気はまだまだ健在だ。それ以上に彼の映画への情熱が伝わってくるのが嬉しい。こっちも自然に背筋が伸びるような気になる。
(オライカート昌子)
ランナウェイ/逃亡者
2012年 アメリカ映画/サスペンス・ドラマ/122分/原題:THE COMPANY YOU KEEP/監督: ロバート・レッドフォード/出演・キャスト:ロバート・レッドフォード、シャイア・ラブーフ、ジュリー・クリスティ、サム・エリオット、ジャッキー・エヴァンコ、ブレンダン・グリーソン、テレンス・ハワード、、リチャード・ジェンキンス、アナ・ケンドリック、スタンリー・トゥッチ、ニック・ノルティ、クリス・クーパー、スーザン・サランドンほか/配給:ショウゲート
2013年10月5日(土)新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
『ランナウェイ/逃亡者』公式サイト http://www.runnaway.jp/