映画の魔法を可能な限り描き出した奇跡のような映画が『ヒューゴの不思議な発明』だ。映画を見ている間の幸福感は大きいし、完璧な作品を創り上げた作り手の喜びがまっすぐに伝わってくる言ったら大げさだろうか?
フランス、パリの俯瞰映像も素晴らしいが、映画が展開するのは、ほとんど広い駅舎の中だ。その圧倒的な現実感のある空間の中を3Dカメラが自由自在に動き回り、そこを行き交う人々を活写していく。
冒頭の場面では、一気に映像の中に引きこまれていく。その臨場感は、自分が1930年代にいるような気分にさせられるし、こんな3Dを見たかったと思わせてくれる。マーティン・スコセッシ監督は、映画の可能性を大きく広げたような気がする。この映画に出てくる映画創成期のジョルジュ・メリエスのように。
映像の見事さだけでなく、語り口の暖かさも格別。ヒューゴの健気さ、いろいろなものを背負ったパパ・ジョルジュの哀しみ、少女イザベラの思春期特有の夢見がちなところなど、みどころは尽きない。
ストーリーに関しては、ケレン味なく、正々堂々と温かい人情の世界を描きつくしているところは、大監督なだけの底力とプライドの賜物だろう。少年少女が出てくるからといって、ファンタジーの甘さはなく、骨太な大作なのだ。
多少値が張っても、3Dで劇場で見るべき作品。アカデミー賞5部門受賞作だが、監督賞も、作品賞も取れなかった。が、それはハリウッドの事情であって、作品の格は変わらない。
(オライカート昌子)
ヒューゴの不思議な発明
2011年 アメリカ映画/126分/監督:マーティン・スコセッシ/出演:ベン・キングズレー、ジュード・ロウ、エイサ・バターフィールド、クロエ・グレース・モレッツ、レイ・ウィンストン、エミリー・モーティマー、ヘレン・マックロリー、クリストファー・リー、サシャ・バロン・コーエン/配給:パラマウント
公式サイト http://www.hugo-movie.jp/