ヤング≒アダルトの画像
(c) 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved
 ときどき、ファッションと見た目の年齢がかなり食いちがっている人を見かける。男性の場合は、彼自身の若き日の流行りや文化に誇りを持っているようで微笑ましい、と目をつぶることもできる。問題は女性の場合で、若き日の流行りを誇るどころか、彼女自身が若いと錯覚していまの流行りを追いかけていることがあり、他人事ながらぎくりとする。かつてそれなりの美少女だったと思しき人の場合は滑稽さも増す。元美少女ほど過去の栄光を忘れることができないようである。

 高校時代は高嶺の花だったメイビス(シャーリーズ・セロン)も37歳。磨きたてればそこらの若い女に負けないけれど、ヤングアダルト小説のゴーストライターとして落ち目になっているだけに焦りは募るいっぽうだ。そこへ故郷の元BF(パトリック・ウィルソン)から、子供の誕生祝いのパーティへの誘いのメールが届き、にわかに燃え立つ。彼だっていまの状況が幸せなはずはないわ、彼の恋心を取り戻して見せるわ! というわけである。

ヤング≒アダルトの画像
(c) 2011 Paramount Pictures. All Rights Reserved
 思い込みが強いというのも元美少女の特徴である。元同級生(パットン・オズワルト)の心ある忠告もなんのその、大胆不敵に元BFに接近するメイビスは、ある意味あっぱれである。十人並みかそれ以下の女はここまで思い込むことはできない。やがて、町の人々は冷ややかにいまのメイビスを迎えているとわかるが、うぬぼれることで自分を保っているメイビスには単なる嫉妬にしか思えず、元BFへの突撃精神は全開になる。待ち受けるのは屈辱にまみれた自己認識だが、彼女がそう簡単にへこたれないのは、作者が与えた救いだろうか、それとも念入りな皮肉だろうか。

 演じるシャーリーズ・セロンは、過去の来日時に接待した宣伝マンの話によると相当な“ビッチ”だったそうだ。となるとセルフ・パロディかとも思えるが、それは考え過ぎだろう。彼女はあくまで演技派女優として、有名人に憧れ、ついになれなかった元美少女をブラック・ユーモアたっぷりに演じたのである。こう言い切るわたし自身の底意地の悪さにぞっとしないでもないが、それくらい、ちょっとむきになりたくなる快作なのである。
(内海陽子

ヤング≒アダルト
2011年 アメリカ映画/94分/監督:ジェイソン・ライトマン/出演:シャーリーズ・セロン、パットン・オズワルト、パトリック・ウィルソン、ブライアン・コックス、エリザベス・リーサー、J・K・シモンズほか/配給:パラマウント
2012年2月25日(土)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー
公式サイト http://www.young-adult.jp/