映画作品でもテレビシリーズでも、とっておきのネタというものがある。普通は、テコ入れや最後の手段で使うような、作る方にしたら、できれば最後の最後までとっておきたいはずのもの。
ところが、スター・トレック イントゥ・ダークネスでは、その極め付きの題材を一つと言わず、大盤振る舞いしているから驚きだ。JJ・エイブラムス監督の、勝負に出るかのような熱い志が、見ているうちに伝わってくるようではないか。
イメージを一新した前作のスタートレックは、新たに若くて生意気なカーク船長(クリス・パイン)、スポック(ザカリー・クイント)を配し、若いファンにもスター・トレックの面白さを十分に伝えていた。
続編のスタートレック・イントゥダークネスでは、ベデディクト・カンバーバッチ演じる悪役ジョン・ハリソンの凄まじさは言うまでもなく、カーク船長、及びクルーが成長していくストーリーも見逃せない。カークが徐々に船長として変化していく姿は感動的だ。
映画は山場が波状攻撃のように畳み掛けてきて、最後まで息を抜けない。普通の映画ならひとつあれば十分な、見ごたえがあるシーンがてんこ盛りである。極度に贅沢な映画なのである。(一人ひとりが主演級の、豪華なキャストを見てもその意気込みが伺える)
ありがちな安っぽいセットや美術とも無縁。奥行きがあり、リアルで引き込まれる世界を作り上げている。さもなければ最後の一番危険なシーンで、見ていてあれほどドキドキするだろうか? 本物の核融合複合施設(NIF)で初のロケを決行するぐらい本物志向の映画なんて、聞いたことがない。やり過ぎているほどの豪華な作品を堪能して欲しい。 (オライカート昌子)
スター・トレック イントゥ・ダークネス
オフィシャル・サイト
http://www.startrek-movie.jp/