『金の国 水の国』映画レビュー

嘘から真実が生まれる。そういう映画を見るのは楽しい。『金の国 水の国』には、なりすまし映画独特の、ドキドキワクワクがある。嘘は、いつバレるのか。どういう状況で? そしてそれはどういう結果を生むのか。

それだけではない。『金の国 水の国』は、隣り合わせ同士の国の複雑な国際問題にもチャレンジしていく。ラストには、太陽が降り注ぐような温かさが待っている。

原作は、2017年「このマンガがすごい!」で第1位を獲得した岩本ナオの同名コミック。手がけたのは、『サマーウォーズ』のマッドハウス。同社所属の渡邉こと乃監督が、長編映画に初挑戦。声の出演には、ナランバヤル役に賀来賢人、サーラ役に浜辺美波。


アニメ映画だからこそ可能となる、作品世界の作りこみがすごい。金の国は、砂漠の中の城壁に囲まれた巨大都市。アラビアンナイトや、アラジンを思わせる豪華な造り。水の国は、熱帯ジャングルの要素と、ネパールやチベットを思わせる古風さ。素朴で平和な風が吹き込んでくる。

壁を一つ抜けると、まるで異世界へのポータルを通ったように、別世界が開けていく要素は驚きがある。

そこで繰り広げられるのは、不器用な正直者同士が、人のためにつく嘘をつく状況。そこから生まれる優しいサスペンス。その嘘は、やがて周囲の人の心に忍び込み、凝り固まった考えを変え、ついには世界観を変える。超強力な嘘となる。

主役二人のキャラクターが心に残る。金の国の王女サーラは、国で一番美しい女性ということになっている。だけど実際には、おっとりぽっちゃりタイプ。それなのに、見れば見るほど、サーラ本来の心の美しさが、表われ出てくる。その美が、外見の美しさをしのいでいくところが素敵だ。

一方の、水の国の建築士ナランバヤルは、お調子者のようで、かなりの切れ者。それを鼻にかけることはなく、自分にできることは、できるだけやり切ろうとする。善意がある。一所懸命さがある。普通の日本の青年のような近しさを感じる。彼の知性が正体を現わしてくるプロセスも、みごとだ。

犬猫映画としての面白さも強調したい。アニメ映画だと、ペットはしょせん、添え物的に描かれることが多い。今回の犬猫の存在は、映画を引っ張っていく。可愛らしさも満点だ。もし、あなたがアニメ映画での、犬猫の描き方に納得できないのなら、ぜひ『金の国 水の国』で、不満を解消しよう。
(オライカート昌子)

金の国 水の国
2023年1月23日より全国ロードショー
(C)岩本ナオ/小学館 (C)2023「金の国水の国」製作委員会
2023年製作/117分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画