『エンドロールのつづき』映画レビュー

少年よ、勉強せよ。かの『RRR』もラストシーンはそこにつながった。だが、『エンドロールのつづき』は、勉強せよというだけの映画ではない。『ニュー・シネマ・パラダイス』とは似ているけれど少し違う。

『RRR』との共通点は、インド映画の豊かで奥深い世界であり、『ニュー・シネマ・パラダイス』との共通点は、映画愛だ。さらに、『スタンド・バイ・ミー』の郷愁もプラスされ、心がキュンとする。

なぜ勉強が大事かは、全編を通した基本テーマでもある。勉強しなければ始まらない。格差が世界を形作っているインドではなおさらだ。彼は鉄道駅しかないひなびた田舎町に住むチャイ売りの少年サマイだ。彼が夢を叶えるための最低条件は、英語ができること。だが問題は、彼は勉強が大嫌いなこと。

彼が大好きなのは、映画だ。家族で見に行った途端に恋してしまった。映画の中のまぶしい光、極彩の彩り、情熱的な恋とダンスと歌、激しいアクション。それから彼は、映画のためには何でもすることになる。

学校をサボり、母の弁当を他人に譲り、映写ルームに忍び込む。村の少年たちと、お化け村の隠れ家で、独自の映画室を作り上げる。

スクリーンを彩る背景の豊饒さにも注目だ、草原のライオン、鹿。屋外の料理場で弁当を作る母の美しさ。料理はおいしそうで、それを食べる人が羨ましくなる。映画を見る快さがギュッと凝縮されたシーンが続く。

だが、すべてが移り変わる。完璧だった世界が壊れていくのは、観客にも予測がつくだろう。映写機も映写技術もフィルムも過去のものなのだから。その遺物を愛してやまない少年に現実が降り注ぐ。

実はこの映画は、消えていく世界と再生していく世界の間を描いているのだ。ラストシーンは、まさに思いがけない映像マジックが展開していって胸を突く。

エンドロールのつづきは、監督の実体験がもとになっているが、その経験を映画という媒体に思い切りの愛を込めて、そっくり観客にプレゼントしてくれているのだ。
(オライカート昌子)

エンドロールのつづき
023年1月20日より全国公開
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2021年製作/112分/G/インド・フランス合作
原題:Last Film Show
配給:松竹