焦点を定めたことで個性が浮き出た体験的SF戦争映画
エイリアンが攻めてきて、街が破壊され、人々を守るために戦士が戦う映画。そういう映画は今まで何度も作られてきたし、これからも何度も作られるだろう。中には『第9地区』のように個性的でワクワクできる素晴らしい映画もあったし、どう見てもB級にしか見えない映画もあった。果たして『世界侵略:ロサンゼルス決戦』はどうだろうか。あまり期待しないで見に行った。
娯楽作としては申し分ないし、みどころも多い。成功の理由のひとつは、的を絞って表現したところにある。強力・極悪なエイリアンが相手で、世界が滅亡に瀕しているのを隅々まで描くとしたら、長大な時間と膨大なキャストが必要になる。もちろん際限のない予算もだ。そんなことは不可能/不必要だ。
そこでスタッフが考えたのが、ハンディカメラを使って、実際に体験しているように見たままを表現すること。取り残された一般人を救出するために、敵地に乗り込む一個小隊の目を借りて表現される。絨毯爆撃までの限られた時間内に終わらせなければならない仕事だ。
姿を見せないエイリアンを相手に一人ひとりと隊員が減っていく。臨場感は相当なものだ。小隊内の複雑な人間関係にも焦点が当てられている。SFアクションというよりは、戦争映画のノリだ。映画に規律と端正さをもたらしているのは、主役のマイケル・ナンツ曹長を演じるアーロン・エッカート。演技派の誇りをかけて、映画にリアルさと重厚さも与えている。
ナンツ曹長は、内に熱いものを秘めた控えめで嫌われ者のベテラン。そんな彼が周囲を少しずつ変えていく、そのプロセスがいい。本音を言うと、私はアーロン・エッカートのファンなのだ。アクションに挑戦してくれて、いぶし銀の魅力を見せてくれただけで満足してしまっているところがある。
アーロン・エッカートは『ダークナイト』以来のアクションだが、戦争ものにもSFアクションにも抜群の相性の良さを見せるのは、『アバター』でもおなじみのミシェル・ロドリゲス。彼女が出ているだけで頼りがいを感じる。たとえ、地球のほぼ全域を侵略しつくしたエイリアンでも、このチームには敵わないよと思わせるのは、果たして成功なのだろうか? (オライカート昌子)
世界侵略:ロサンゼルス決戦
9月17日(金)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
オフィシャルサイト http://www.battlela.jp/