『マトリックス レザレクションズ』映画レビュー

最近の女性監督が手がけた作品は、面白い。2021年のアカデミー監督賞には二人の女性監督がノミネートされ、クロエ・シャオ監督が『ノマドランド』で受賞した。アクションエンターテイメントの世界でも、『ワンダーウーマン』のパティ・ジェンキンス監督が一気に評価を高めた。そして、ラナ・ウォシャウスキー監督の『マトリックス レザレクションズ』だ。

『マトリックス レザレクションズ』は、前三部作と肌触りが違う。その理由が、性転換を果たしたラナ・ウォシャウスキー監督の女性監督としての作品だからではないかと思う。

主演はネオ/トーマス・アンダーソン役のキアヌ・リーヴスなのは変わらないが、彼を取り巻く主要登場人物は、ほとんどが女性だ。トリニティー役のキャリー=アン・モス、ナイオビ役のジェイダ・ピンケット・スミス、バッグス役に、ジェシカ・ヘンウィックなど。

派手でスタイリッシュな映画世界の軸となるのは、ネオとトリニティのお互いのストーリー。二人がいてこそ世界が成り立つような重要性を持つ。トリニティを取り戻すために、危険を冒すのがこの『マトリックス レザレクションズ』なのだ。

さらに、前の三部作と違うのは、敵を排除するのではなく、共存がテーマになっているところ。今まで敵だった機械AIや粒子的存在とも力を合わせるシーンが感動的だ。

遊び心満載で先見性満ちた世界観、スタイリッシュで鮮やかな映像センスや一見難解な哲学的要素など、見どころも多いが、紛れもない女性的感性の温かさがそこにあるのに気づく。世界はどうあるべきか。ラナ・ウォシャウスキー監督なりの答えがそこにあるような気がする。
(オライカート昌子)

マトリックス レザレクションズ
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2021年製作/148分/G/アメリカ
原題:The Matrix Resurrections
配給:ワーナー・ブラザース映画