『ほんとうのピノッキオ』映画レビュー あらすじ このヒヤヒヤは癖になる

ほんとうのピノッキオ 作品情報 あらすじ

ほんとうのピノッキオとは

19世紀にイタリアで出版された児童文学の『ピノッキオ』が、豪華で繊細な映像と心温まるストーリーの実写映画となりました。イタリア国内のアカデミー賞にあたるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞では15部門ノミネートで5部門を受賞し、その年の国内映画としてNo.1のヒットを記録。アカデミー賞米アカデミー賞2部門(衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞)にノミネート。映像美もさることながら、ピノッキオとは、こんなお話なんだと大人にも納得できるしっかりと構築された世界観に魅了されます。

監督は、マッテオ・ガローネ。ジェペット爺さんに『ライフ・イズ・ビューティフル(1997)』のロベルト・ベニーニが扮し、人間味溢れる演技を見せてくれます。ピノッキオを取り巻く人々にも芸達者勢が勢ぞろいし、職人芸的存在感がたっぷり。ピノッキオを見守る妖精には、フランソワ・オゾン監督の秘蔵っ子、『17歳(2013)』、『2重螺旋の恋人(2017)』のマリーヌ・バクト。

ほんとうのピノッキオ あらすじ

木工職人のジェペット爺さんは毎日の食べ物にも困る生活をしていた。ある日、町に人形劇が来たのを見たことで、木彫りの人形を作ろうと思い立つ。丸太を調達しに行った先では、怪しい動きをする丸太があった。それを手に入れたジェペットが木彫りの人形を掘り出すと、動きしゃべり始めた。ピノッキオと名付け、息子が生まれたと大喜びだったジェペットだったが、とんだやんちゃな人形だった。

学校へ通わせようと、自分の着ている服を教科書と交換したジュゼッペの思いも知らずに、教科書を人形劇の入場料にして見に行ってしまう。それっきりピノッキオは、姿を消してしまった。ジュゼッペはピノッキオを必死で探すが、ピノッキオは、そのころ、失敗と冒険と成長の旅をしていた

ほんとうのピノッキオ 映画レビュー


ピノッキオはちょっと悩む。学校をさぼって、人形劇を見に行くかどうか、一瞬迷う。結局は欲望が勝ってしまうのだけど、その過程がヒヤヒヤなんだよね。

思いがけなく手に入れた5枚の金貨を埋めれば2000枚に増えるよ、と言われた。今回は、悩まない。「増やしたい!」と即答する。ピノッキオは悩まないけれど、見ているこっちはやきもきする。

やきもきやヒヤヒヤが連続技で繰り出される映画だ。人間性を研究し尽くした製作陣が全力で突きつけてくる。この映画のドキドキ感ときたら、普通のホラーやサスペンス映画よりよっぽどのレベルだ。わたしも大人なんだけど、もしかしたら傍から見れば、ヒヤヒヤな毎日を送っているのかもしれない。

子どもであるピノッキオは、悪そうなことでも一度決めたなら、その場その場を完全に楽しむ。その楽しさ、喜びの直接的な伝わり方の強度は味がある。まるで、毎日周囲をヒヤヒヤさせまくっていた子供の時分に戻ったように素敵な気分が贈り物のように襲ってくる。

そういう崖に突き落とされそうな心理サスペンスたっぷりのシーンをエンジンにしながら、少しづつ成長していく長い旅をじっくりと味わえるところに映画の芯がある。ひどい結果になっても、結局最終的にはポジティブに埋まる。いつも妖精に見守られている。ジュゼッペ爺さんにも愛されている。人生はそういうものなのかもしれないと幸せな気分を与えてくれる。

(オライカート昌子)

ほんとうのピノッキオ
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11月5日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ ほか
全国ロードショー
配給:ハピネットファントム・スタジオ